感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
106
再読ではあるが綺麗サッパリ内容を忘れていたので新鮮に読めた。前半のドイツ占領下のフランス潜入行だけでも十分面白いのに、後半は大泥棒VSドイツ軍大佐のヒリヒリする頭脳戦に美女をめぐる三角関係がヒートアップ。二転三転どころか七転八転する展開にページを繰る手が止まらない。簡潔ながらもがっちりバックボーンを押さえた筆致が素晴らしく作品全体に馥郁たるロマンの香り漂うのも実に良い。薄めの文庫本なのに、これだけ娯楽要素を詰め込んで丁寧にまとめる職人芸は見事。一瞬たりとも退屈させないサービス精神にも感服する。2015/03/13
藤月はな(灯れ松明の火)
41
読友さんの感想から興味を持って読んでみた所、凄く、面白かったです!「ナチスの機密暗号=エニグマを解読するために製造機を奪取せよ」という依頼を受けた大泥棒の男爵ことベルヴォアール。裏に裏を掻いた謀略戦、裏切り、友情、ロマンス、別離、人間としての矜持などの人間ドラマが短いページ数の中に濃縮されています。特に鏡に映った像のようなドイツ国防軍情報部、大佐のフォン・ベックやある人が抱いた、矜持を捨てないベルヴォアールへの敬愛が印象的でした。後のエピローグが切なくも祈りたくなります。本当に多くの人に読んでほしい名作。2013/10/23
いっくん
30
英国では極秘暗号機エニグマを奪取すべく、服役中の大泥棒ベルヴォアール(男爵)に白羽の矢が立てられた。自由と大金を約束され、ドイツ占領下のフランスに単身潜入していく…。騙し騙されの誰も信用できない状況を上手く掻い潜っていく男爵の活躍に圧倒されました。読みながらハラハラするけど、危険をいち早く察知してスルスルと躱していく、仲間に助けられ回避していく姿がカッコ良くもあり、驚きでもあり。“男爵はフランスに舞いもどった”にシビれました。冒険小説の良作(^_^*)2017/07/09
スー
22
26英国はドイツの暗号機エニグマを手に入れる為にゲシュタポから金塊を盗んで英国に密輸し逮捕された大泥棒の男爵ことベルヴォアールに自由と大金を約束してゲシュタポが待ち構えるフランスに戻す。ドイツは直ぐにスパイがエニグマを盗むと情報を得て切れ者のフォンベック大佐をパリに派遣ふたりの知恵比べが始まる。ゲシュタポは着実に協力者を潰し男爵を孤立させベックは行動を読み罠を仕掛ける。男爵とベックの戦いには引き込まれ結末には度肝を抜かれ一気に読めた、最高の読書時間でした。2021/02/15
Tetchy
21
これは傑作!正に掘り出し物だ。予想以上に面白かった!ドキドキハラハラの連続活劇だ。まず主人公の盗賊、自らを男爵と名乗るフランシス・ド・ベルヴォアールの造形が素晴らしい。そう、フランス人の大泥棒ベルヴォアールはもうルパンそのものである。これはバー=ゾウハーの手による怪盗ルパン譚、パスティーシュでもあるのだ。いやあ、スパイ小説でありながら、ピカレスク小説でもあり、さらにルパンのパスティーシュでもあるという、非常に贅沢な作品だ。そしてそれを難なく作品として纏めているバー=ゾウハーの手腕に改めて感服する。2010/04/21