内容説明
愛妻キャシーとともにサリーナスに入植したアダムは、父の遺産で農園を買い取り、新しい“エデンの園”の建設に着手する。聡明な中国人の召使いリーや、近隣に住む純朴なアイルランド人サミュエルも協力を惜しまなかった。だが飽くなき欲望を胸に秘めたキャシーが、双子の男児を出産した直後に、恐ろしい悲劇を巻き起こす。営々と築き上げてきた楽園の崩壊を知ったアダムは、失意と絶望の淵をあてどなく彷徨うのだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
109
今更ながらにアダムの意味に気づく。イブが随分とひどい描かれようだと思ったら、キャシーはヘビなのか。噛み付く歯からは毒が出る。この作品の双璧をなすアダムとサミュエルが出会い、関わり始めた。この巻最後に、二人でカインとアベルについて語り合っている。その上で、双子の名前をなぜあのようにしたのだろう。アダムのように、私もいつも神がカインを許さない理由がわからない。そのあたりを次巻では触れてくれるだろうか。2016/08/23
ペグ
84
過去の美徳や素朴さが経済や政治によって変化が起こりつつある時代。いよいよアダムの前にキャシーが登場した。[「時には沈黙が一番よく物語ることがあるもんですわい」(サミュエルの言葉)馬車の鞭についている編んだ紐の先端で馬をピシリと打つように何かが彼女をピシリと打ったに違いなかった。それは何か異様にはりつめたものの知覚というべきものだった](102頁) わたしにはキャシーが悪魔の化身に思えて仕方がない。中国人リーの登場で益々物語に深みが。早速[3)へ!2021/07/11
扉のこちら側
84
2016年1037冊め。【238-2/G1000】1巻の前半ではアダムとチャールズが「カインとアベル」であると思わされたのに、この巻ではなるほど、彼が「アダム」であり「カイン」ではないことが明らかに。聖書では神への捧げものは罪を贖うものとして生き物の血を流す必要があったわけだが、血を流さない自己流の贈り物をしてしまったカインは神に受け入れられなかった。ではこの物語は3世代目でどうなっていくのだろう。そしてイブでもあり蛇でもあったキャシーにまた驚かされる。(続)2016/12/08
キムチ
58
この巻の訳者は大橋氏・明らかに学者の口調・・と思ったら。新天地を作り出す気負いは何のことやら・・フィクションとは言えアダムの精神的レベルにがっくりする事数々。情けなくなってしまう。確かに人間的に問題があるキャシーとは言え、夫が鋳型にはめ込んですんなりいく妻ならハッピーだろうが。おのずと周りにいるサミュエルとリーの思惟の深さが浮き彫りになる。特に興味を引くのが中国人リーのアイデンティティの確立への考え。1980~2000辺り 映画を片っ端から見た映画では「ステレオタイプの中国人」をプレゼンされていた訳だ。2020/09/12
NAO
25
アダムの農園に井戸を掘りに来て、アダムとキャシーの風変わりな結婚生活を見て慄然とするサミュエル・ハミルトン。サミュエルの嫌な予感は当たり、キャシーが双子を出産した数日後、アダムの夢は砕け散る。怖いぐらいに変貌したキャシーはサミュエルを激しく憎むが、悪魔的で他人の考えていることなどお見通しだと思っているキャシーには、善悪を超越した生き方をしているサミュエルがどうしても理解できず、そういう彼の存在が赦せないのだろう。2015/08/10
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