出版社内容情報
昨年話題を呼んだアンソロジーに続き、作家別傑作選を3カ月連続刊行。星雲賞受賞の表題作ほか、書籍初収録作を含む奇想&SF集。
内容説明
SF作家・伴名練が今この時代、最も読んでほしい作家の傑作群を全力で編纂する新シリーズ。第1弾は奇想文学の名手、中井紀夫。山頂の楽堂でたったひとつの交響楽を数百年にわたり演奏し続ける楽団を描いて、星雲賞を受賞した表題作のほか、不思議な少女とのささやかな出逢いを描く「山手線のあやとり娘」、書籍初収録作の「花のなかであたしを殺して」など全11篇。デビューからの全軌跡を辿る超充実の巻末解説を併録!
著者等紹介
中井紀夫[ナカイノリオ]
1952年生まれ。武蔵大学人文学部卒業。ハヤカワ・SFコンテストを経てデビューし、短篇「山の上の交響楽」で星雲賞を受賞
伴名練[ハンナレン]
1983年生、作家。著書『なめらかな世界と、その敵』(早川書房)、『少女禁区』(角川ホラー文庫)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
79
やはり表題作がよかった。収録作はどれも奇想にみちていて、設定された世界で、人物(SFなので、そうとは限らない)がどのように日常(十分異常にみえるだろうが)を送るかを、想像力を駆使して描く作品が多かった。タイトル作はそんな中でも理解しやすい世界なので、ディテールまで楽しんだ。オチを期待するような作風ではないので、かえって余韻を残す。たとえば長い長い交響楽は結局は終わるのか、とか、どんでん返しがラストに待っていないだろうか、とか。考えてみたら現実世界にも、オチやきれいなラストなんてまずない。その点でリアルだ。2023/06/02
かのこ
56
日本SFの臨界点・恋愛篇の「死んだ恋人からの手紙」が好みだったので、こちらも手に取ってみた。全て演奏するのに1万年かかる交響楽を300年演奏し続けている楽団が、演奏の最大の難所「八百人楽章」へ挑む「山の上の交響楽」、世界の壁の途切れるところを人生をかけて目指す男の「見果てぬ風」などなど奇想天外なお話ばかり。中でも「花のなかであたしを殺して」がとてもとてもいい。どこかかわいらしい見聞録を聞いていたはずが、思いっきり生と死、愛について考えさせられるというか。題名がまたこの作品に鮮やかな命を与えていると思う。2021/06/19
ざるこ
53
11篇。奇想SFと言っても空気感がとても優しい。バッドエンドやホラー気味の作品もあるけど童話のような印象を受けることも。数千年かかる交響楽を途切れることなく演奏する表題作、人生の節目ごとに殴り合う男たちを目撃する「殴り合い」将棋盤のような巨大な板を支え続ける種族「神々の将棋盤」など想像が楽しい作品が盛りだくさん。「絶壁」は南が下で北が上の男。私たちとは世界が垂直なため家の壁で寝るという強者。ベストは「見果てぬ風」南北が壁で仕切られた世界の冒険譚。主人公の好奇心に共感し、その勇気と諦めない心に感動します。2021/09/27
カフカ
39
伴名練さんが編纂した全11編の短編集。中井紀夫さん初読みですが、めちゃくちゃ面白い作品ばかりじゃないですか\(ᯅ̈ )/全部面白かったけど、特に好みなのは「見果てぬ風」。その次に「神々の将棋盤」と「死んだ恋人からの手紙」が好み。私は難しいSFは苦手なんですが、こちらは怪奇幻想寄りなのかな?(SFの定義がしっかり分かっていないので間違ってたらすみません)凄く読みやすかったです。そして巻末の伴名練さんの解説。凄まじい熱量。愛が溢れ過ぎです……!このシリーズは追いかけなくては。2021/10/12
ジョゼ★ネコを愛する絵描き(趣味)
32
お友達との読書会本です。 お友達が選書してくれました。 伴名練さん編、中井紀夫さんのSF中編・短編集。 表題作「山の上の交響楽」がとても好きです。 その他「見果てぬ風」「花のなかであたしを殺して」がとても印象的でした。 お友達と「どのお話が面白かった?」と感想を共有しましたが、好きなお話がほぼ一緒で嬉しかったです。 伴名練さんの解説にはとても情熱を感じました。 改めて「SFって面白い!」と感じさせられる一冊でした。2021/07/27