出版社内容情報
〈葉室史観〉が心に響く姉妹小説
内容説明
日本とオランダの懸け橋に。“長崎屋”の娘、るんと美鶴は、江戸参府の商館長が自分たちの宿に泊まるのを誇りにしていた。そんな二人が出逢った、日蘭の血をひく青年、丈吉。彼はかつて宿の危機を救った恩人の息子だった。姉妹は丈吉と心を深く通わせるが、回船問屋での殺しの現場に居合わせた彼の身に危険がふりかかる…「シーボルト事件」などの史実を題材に、困難な中でも想いを貫いた姉妹の姿を描く歴史小説の傑作。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。2005年『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞してデビュー。2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞、2016年『鬼神の如く―黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mapion
327
長崎の出島で鳴滝塾を開いた、オランダ商館付きの医師シーボルト。国外持ち出し禁止の書類を持ち出そうとしたことが発覚して起こったシーボルト事件。オランダ商館長が江戸に参府する際の宿が日本橋長崎屋。長崎屋の娘二人は事件に直接の関わりはないが、事件発覚前の経緯から悲しく怖い思いをする。遠山景元(金四郎)、樺太を探索した隠密間宮林蔵、抜け荷シンジケートなどが現れ、事件の経緯が解きほぐされる。葉室麟が創り上げたシーボルト事件の顛末がここにある。2026/01/04
ふじさん
85
物語の舞台となるのは、オランダのカピタン(商館長)らが利用していた実在の阿蘭陀宿長崎屋。ここには、娘二人、姉のるんと妹の美鶴がおり、二人の波瀾に富んだ数奇な運命を、葉室麟の史実も駆使しながら創作力をフルに発揮して巧みな筆さばきで描かれる。更には、葉室麟独自の見方で語ったシーボルト事件の全容も読み応えがある。史実と創作を交えて描いたこの作品は、絶妙な伏線等、ミステリとして道具立ても謎解きの楽しさも織り込まれたエンタテイメントの歴史小説だ。葉室麟の今までの作品とは違った面白さがある。2023/01/29
蒼
28
シーボルトが日本地図や江戸城見取図を欲した為に、多くの人の命が奪われて、阿蘭陀宿長崎屋は焼け落ちた。歴史上のシーボルト事件に長崎屋の二人の娘、るん、美鶴を絡ませて、阿蘭陀の学問を身につけようと熱望する男達、思いを伝えて繋ごうとする女達の願いが、立ち向かう事すら出来ない巨大な組織に潰されていく様子が辛かった。「ハイドランゲア・オタクサ」シーボルトが愛し娘をもうけた長崎の遊女の名前「お滝」。おたきさんと言えずオタクサと呼んだ名前が、紫陽花の学名になったのは有名な話。ここにも伝え繋ごうととした思いが残る。2021/06/04
ミネ吉
12
初読みの葉室麟さんによる、時代小説。江戸時代、オランダ商館長の江戸参府時に日本橋で定宿となっていた長崎屋を舞台に、シーボルト事件に材をとったサスペンスを展開する。それなりに面白く読めたけど、微妙な出来栄えだなというのが正直な感想。文庫の背表紙だと「歴史小説」と書いてあったので、比較的リアルな歴史ものを期待していたのだけれど、序盤で殺人事件を絡めたミステリー風味になり、霊感娘も出てきてなんだかわからなくなってしまった。後半シーボルト事件の真相部分は結構面白かったが、主役の「オランダ宿の娘」たちの影が薄い。2025/09/28
ひろ
12
江戸にある長崎屋という宿屋の娘を主人公とした歴史ミステリ。出島から江戸に上るオランダ人を泊める宿のため、歴史物でありながら国際色が豊か。一方、主人公の周りの人々は人情味にあふれ、江戸の市井として想像するやりとりが心地よい。事件が起こってからは、緊迫した空気が物語を支配していく。シーボルトや間宮林蔵など、日本史に疎い自分でも知る人物も登場してきて楽しい。史実に基づいた事件のため、要所の説明で物語の流れが少し重く感じてしまったが、学びになったのも確か。普段触れないジャンルを興味深く読み終えた。2025/03/16




