出版社内容情報
2019年ベストSF第1位に輝いた伴名練が、書籍未収録作を中心に「今最も読みたいSF短篇」を精選した恋愛・家族愛アンソロジー。
内容説明
『なめらかな世界と、その敵』の著者・伴名練が、全力のSF愛を捧げて編んだ傑作アンソロジー。恋人の手紙を通して異星人の思考体系に迫った中井紀夫の表題作、高野史緒の改変歴史SF「G線上のアリア」、円城塔の初期の逸品「ムーンシャイン」など、現在手に入りにくい、短篇集未収録作を中心とした恋愛・家族愛テーマの9本を厳選。それぞれの作品への解説と、これからSFを読みたい読者への完全入門ガイドを併録。
著者等紹介
伴名練[ハンナレン]
1988年生まれ。京都大学文学部卒。2010年、大学在学中に応募した「遠呪」で第17回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。同年、受賞作の改題・改稿版に書き下ろしの近未来SF中篇「chocolate blood,biscuit hearts.」を併録した『少女禁区』(角川ホラー文庫)で作家デビュー。近年は中短篇SFを中心に発表。2019年に短篇集『なめらかな世界と、その敵』(早川書房刊)を発表し、ベストSF2019投票で国内篇の第1位を獲得した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙@5/19文学フリマQ38
80
恋愛もののSFアンソロジーです。あまり日の目を見なかった、言わば手のひらからこぼれ落ちてしまった作品の中からこれだけの秀作を集めてくる伴名さんはさすがです。特に好きなのは「人生、信号待ち」と「死んだ恋人からの手紙」。「死んだ……」は単なるラブレターの往復書簡なのに設定の妙でこんなに悲しみを誘うなんて。2020/09/09
かのこ
60
SF作家・伴名練さんが編むSFアンソロジー“恋愛篇”。恋愛篇はシンプルな前提のもと進む話が多く、怪奇篇よりも読みやすかった(怪奇篇は深読みの楽しさがあるけど)。信号待ちの間に人生が過ぎていく「人生、信号待ち」。人が少しずつ生まれ、少しずつ死んでいく世界のバトンタッチ「生まれくる者、死にゆく者」。世界を救った少女を見送った少年がアラサーになって…の「劇画・セカイ系」などが特に好みだった。読書会で皆さんの感想や考察をお聞きできたのも興味深くて楽しかった。一人一人好きな作品を当てていくのはすごく面白い試み。2020/09/06
♪みどりpiyopiyo♪
59
「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」と称された伴名練が贈る傑作アンソロジー。先日の『怪奇篇』に続き『恋愛篇』を。■それは恋愛ではない上に愛という程の物でもないのでは?と感じる作品が多く、恋愛要素は求めてないけど このタイトルで愛が無いのは引っかかります。執筆時期も『怪奇篇』程の広がりがなく、「恋愛」が男性作家のシスヘテロばかりで期待した程の広がりも感じられず。■藤田雅矢「奇跡の石」、小田雅久仁「人生、信号待ち」が好きでした ( ' ᵕ ' ) (初出 1989〜2014年、2020年 編纂)(→続2020/11/18
なっぱaaua
42
伴名練が熱い。SFのスペシャリストである彼の選んだ個人短編集未収録という作品だけに既読は有りませんでした。著者紹介3頁も熱いが、既知の著者も数名しかおらずなかなか興味深かったです。「奇跡の石」藤田雅矢、「生まれくる者、死にゆく者」和田毅、「G線上のアリア」高野史緒、「アトラクタの奏でる音楽」扇智史、「人生信号待ち」小田雅久仁が好み。恋愛編とあるが家族愛や同性愛もある。アンソロジーで見つけられた新しい発見がとても楽しい。次の作品を選ぶ参考になります。編集後記のアンソロジーガイドも凄いのだ。~続く~2020/08/19
geshi
36
良かったのは、文章の力でホルム町の魅力を五感で体感させ読んでいるうちに語り手同様飲み込まれてしまう『奇跡の石』、少し不思議な家族の設定であっても生と死そして継続というテーマが普遍的な『生まれゆく者、死にゆく者』、互いに近づきつつ離れたがるガール・ミーツ・ガールとして百合の純度が高くラストのセリフが実に美しい『アトラクタの奏でる音楽』、人生の縮図を短い中にギュッとした『人生、信号待ち』。『ムーンシャイン』は何書いてあるのか全然分からない自分が憎い。2022/02/02