出版社内容情報
内容説明
「君を殺す」―復讐の誓いと訣別から、半世紀。政治家となったソリヤは、理想とする“ゲームの王国”を実現すべく最高権力を目指す。一方のムイタックは渇望を遂げるため、脳波を用いたゲーム“チャンドゥク”の開発を進めていた。過去の物語に呪縛されながら、光ある未来を乞い願って彷徨うソリヤとムイタックが、ゲームの終わりに手にしたものとは…。第38回日本SF大賞&第31回山本周五郎賞受賞作品。
著者等紹介
小川哲[オガワサトシ]
1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年に第3回ハヤカワSFコンテスト“大賞”を『ユートロニカのこちら側』で受賞し、デビュー。2017年に発表した第2長篇である『ゲームの王国』が第39回吉川英治文学新人賞最終候補となり、その後、第38回日本SF大賞と第31回山本周五郎賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
491
第38回日本SF大賞と第31回山本周五郎賞の受賞作。この2つの賞のW受賞は珍しいと思う。SFマガジン編集長の塩澤快浩氏などは「“伊藤計劃以後”という時代は本作の刊行によって幕を閉じる。」とまで大絶賛。読書メーターの人たちの評価も概ねひじょうに高い。だが、あえて言う。まず本書は良くも悪くも同人誌的な構想、文体である。アマチュアっぽさは上巻でも感じたが、会話文がとりわけ稚拙である。人物造型もそれこそゲームの主人公のようだ。時として饒舌に過ぎ、作品の流れを阻害する。この面白さとははたして小説としてのそれか?2021/01/14
W-G
331
物語全体の筋は一旦脇に置いて、会話の応酬が増え、そこは楽しめた。この手の群像劇は、最終的に各人のパートがどれだけテーマに沿って有機的に結合しているかが明暗を分けると思っている。その観点では、キャラが使い捨てになっていたり、存在意義を見出だせないままに話を畳まれてしまった設定・人物か多すぎると感じた。何かの暗喩のような禅問答じみた会話も、その解釈を読者に委ね過ぎていて、逆に奥行きのなさを印象づけてしまったかも。最終的にはラディーをどういう位置付けで描きたかったのか不明瞭なのが一番の不満。2023/04/26
chiru
143
下巻は、ポル・ポト政権が終わり、主人公達が大人になった2023年のSF編。タイトルの『ゲーム』の概念を、ソリヤは理想とする王国の実現、ムイタックは完全なゲームの実現とする。物語の中心がなぜ『ゲーム』かというと、支配者が次々に入れ変わる『戦争』が、でたらめなゲームのようだから。そしてもうひとつの鍵である『物語』。人は愛する人の記憶に残りたいと望み、記憶で編んだ物語の続きを望む。白いページに『未来』と『希望』を記すために…。ふたりの最後の邂逅は、どの物語よりも胸を締め付ける、切ないラブストーリーでした✨★5↑2020/05/03
修一朗
139
ソリヤが理想に基づく「ゲームの王国」創設に挑む展開。これもユートピアだ。脳波を使ったゲーム,チャンドゥックが刺激的だ。こういうところがSFの醍醐味だ。プロジェクトヘイルメアリーを読んでいた時と同じ気分。その後のカンボジアの歴史につながる展開はなかったが,カンボジアは今もクメールルージュを脱けてベトナムに協力したメンバーの子息たちが政治を支配している。最後まで疾走感を保ったまま,突っ走れた。もうちょっと歴史に依った方が好きだけれども,よかった。傑作といっていいと思う。これが’地図と拳’に繋がっていくのだな。2025/01/11
KAZOO
138
小川さんのSF大賞を受賞した作品ということで読んでいたのですが、上巻ではまるっきり異なり東南アジアの国の歴史を読んでいるような感じでした。ただ若干様々な才能を持っている人物などが出てきてということが少しSF的な感じを受けました。下巻ではかなり近未来的なシチュエーションでゲーム的な世界が出てきたりします。ただ新しい人物がどんどん出てきてそれを確認するのに手間がかかったりしました。小川さんの長編の本は興に乗るといいのでしょうが(例えば「地図と拳」)このような感じだと読むのに時間がかかってしまいました。2023/10/17
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