出版社内容情報
嘉永三年、南部藩・遠野。外川市五郎は、迷い込んだ山里の廃屋で不思議な少女と出会う。
内容説明
嘉永三年―南部藩、遠野。城下に住まう外川市五郎は出世や武道よりも絵を好む、風変わりで孤独な青年。ある日、深紅の山百合を探して迷い込んだ山里で、彼は座敷童のような少女、桂香と出会う。やがて共に暮らし始めたふたりは、流行病や貧苦で世を去った人々に“ありえたかもしれない幸福”を刻んだ板絵を生み出していく…。後世に「供養絵額」と呼ばれる死者たちの肖像を遺した絵師・外川仕候を描いた歴史ファンタジー。
著者等紹介
澤見彰[サワミアキ]
1978年埼玉県生まれ。作家。2005年『時を編む者』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みっちゃん
79
物語の舞台の遠野には1度だけ行った事がある。1人の処罰者も出さずに要求を通した、三閉伊一揆の田野畑村も訪れたが、この供養絵額は目にする機会がなかった。美味しいものを食べ、綺麗な着物を着て、家族と楽しく過ごす、色鮮やかな死者の絵。生前の暮らしが辛かったからこそ、あの世ではこんな風に幸せになって欲しい。そして自分もいつかはその世界に行くのだ、という希望。史実と虚構が巧みに織り混ぜられ、しんしんと降り積もる雪のように、優しさと切ない願いが積み重なってゆく佳作だった。2016/02/10
あおでん@やさどく管理人
45
イラストに惹かれて読んでみた。舞台は岩手県の遠野、そこには死者の”ありえたかもしれない幸福”を描いた板絵、「供養絵額」がある(現存している)。こうした絵を描いていたという変わり者の武士・外川市五郎が主人公の歴史ファンタジー。心優しい彼と絵を描くことで少しずつ心を開いていく桂香。そして、その心優しさから百姓たちの不満に心を痛め、放っておけなくなる市五郎…。彼らの行く末は。おすすめ。2016/03/06
キャプテン
37
★★★★☆_「それなりに北の国から〜フェア〜」第四弾。今日僕は遠野の本を読んでいるわけで…。遠野といえば妖怪なわけで…、この本も妖怪ばなしがオンパレードになると思っていたわけで…。でも実際は違ったわけで…。心やさしきお侍さまと親を亡くした幼子が登場しており、それだけで泣ける気がするわけで…。案の定、僕は感動したわけで…。彼らは絵を通して心を触れ合うわけで…、とても美しいわけで…。♬あーあーああああーああああーーーるーるーるるるるるーるるーあああーああーあああーー…[それなりに北の国から2018〜積読〜完]2019/01/09
あおでん@やさどく管理人
36
【読メ登録800冊目】【3度目の再読】登録数の節目は自分のお気に入りの本を再読するようにしている。史実そのままではないにせよ、市井の人々の哀しみに寄り添い、幸せを願って絵を描いた外川市五郎という武士がいたのは事実。不思議な話も数多く残る遠野の町のこと、彼の傍らには絵を描くのが好きな、座敷童のような女の子がいたのかもしれない。2019/11/08
あおでん@やさどく管理人
32
【2年弱ぶりの再読】岩手県・遠野に現存する「供養絵額」と、その絵師・外川仕候をモチーフにした歴史ファンタジー。市五郎がその心優しさゆえ、武士としての立場と百姓たちの不満に板挟みになってしまうところは、再読でも心を打つ。そして、桂香の心の強さに救われる思いがする。個人的には隠れた名作だと思う。現代の絵師・げみさんの装画作品を追うきっかけにもなった本。2018/01/25