出版社内容情報
言語を越えて神の存在に迫る超SF。かつて私たちが話していたのは神の力を凌駕するニホン語という言葉だったのだろうか?
内容説明
友人とゲイパレードを見に来ていた青年、菱屋修介は、晴天の空にアポカリプティック・サウンドが響くのを聞き、天使が舞い降りるのを見た。次の瞬間、世界は終わりを告げ、菱屋は惨劇のただなかに投げ出された。そして彼が逃げこんだ先は自分の妄想世界である月世界だった。多数の言語が無数の妄想世界を生み出してしまった宇宙を正しく統一しようとする神の策謀と、人間は言語の力を武器に長い戦いを続けていたのだった。
著者等紹介
牧野修[マキノオサム]
1958年大阪生まれ。大阪芸術大学芸術学部卒。高校時代に筒井康隆主宰の同人誌“ネオ・ヌル”で活躍後、1979年に“奇想天外新人賞”を別名義で受賞。数年の沈黙ののち、1992年に“ハィ!ノヴェル大賞”を長篇『王の眠る丘』で受賞。同書にて“牧野修”としてデビュー。1996年、特異な言語感覚に満ちたドラッグ小説『MOUSE』で、高い評価を得る。1999年『スイート・リトル・ベイビー』で第6回日本ホラー大賞長編賞佳作を受賞。2002年『傀儡后』で第23回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MICK KICHI
72
(表紙:YOUCHAN) 表音と表意が難解にもつれ合った言語を操るニホン語脳なるものの神秘性が果たしてどのくらい有益なのかはわからないが、<神>にも対応しうる力を持つ言語パワーを武器とする設定が秀逸。学生時代に現代詩を学びながら熱を上げた言語記号論のソシュールが出てくるあたりは痛快だった。ジョン・ディーが見る狂気と月の世界、昭和の日本の情勢をおぼろげに知る自分には<幻視>され、ズラされた景色の違和感とメタ言語でメタメタに描写されていくニホンを楽しむ事が出来た。2020/02/22
つねじろう
64
このファンタジーなイカしたデザインの表紙で判断すると裏切られる。そう言葉の世界も宇宙みたいだからそれ自体がSFの舞台になるのは不思議はない。だけどこの話はとっても不思議で少し厄介。でも筒井康隆や伊藤計劃、神林長平で免疫が出来てるから平気。こちらの歴史と一部リンクしながら進んで行く世界はアメリカに占領されたままでニホン語が無くなっている。「始めに言葉ありき」と神より先に存在した言葉。その言葉を取り戻そうとする者達の戦いはマトリックス風。脳味噌ウニ状態になるけど頁を捲る手は止まらないそんな厄介な言語SFです。2015/07/25
絹恵
49
伝えるために言葉があるのなら、正しさを残すことも、間違いを明かすこともしなければならないのだと思います。もし守るために言葉を使って戦うのなら、君のいない世界では意味を成さない叫びで、傷付けて壊して求めるかもしれません。でもそれは全て、君とのラグランジュポイントを探すために。そして言葉にならないこの気持ちを名付けるために。2016/02/24
きっしぃ
37
なぜか、借りた本…(´・ω・`)初っぱなから、ゲイパレード見に行って、天使が世界を崩壊させて、現実に耐えられない主人公が妄想の月世界に逃げ込む…とどっから突っ込んでいいのかと困惑…。その後のニホン語がなくなった世界の話は面白かったけど、それぞれの世界が収束しはじめてからはまた何がなんだかわからなかった…(´・ω・`)レビューは圧倒的に好意的なので、SFを読む力が足りない自分に非があるのでしょう…。2017/12/26
miroku
35
実に牧野的でありながら山田正紀的でもあり筒井康隆的でもある。さらにエンデ的でもある小説。初めに言葉ありき。作家の業のような小説であるとも言える。2016/05/16
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