内容説明
さまざまな「後藤さん」についての考察が、やがて宇宙創成の秘密にいたる四色刷の表題作ほか、百にもおよぶ断片でつづられるあまりにも壮大で、かつあっけない銀河帝国興亡史「The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire」、そしてボーイ・ミーツ・ガール+時間SFの最新型モデル「墓標天球」など、わけのわからなさがやがて圧倒的な読書の快楽を導く、さまざまな媒体で書かれた全六篇+αを収録。
著者等紹介
円城塔[エンジョウトウ]
1972年、北海道生まれ。2007年、「オブ・ザ・ベースボール」で第104回文學界新人賞受賞。同年、『Self‐Reference ENGINE』(ハヤカワ文庫JA)で長篇デビュー。2010年、『烏有此譚』(講談社)で野間文芸新人賞受賞。2011年、第3回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞受賞。2012年、「道化師の蝶」で第146回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
264
全部で7つの短篇を収録するが、すべて異なった手法で書かれている実験的、習作的な小説群。円城塔のいかにも理系的な発想が随所に見られ、小説でありながら、物理学的な発想法との相関性が高いようだ。「未来に向かうことは、すなわち過去へ遡行することでもある」と言ってみることもできる、といったふうに。表題作「後藤さんのこと」は、実態があるといえばある、いわばホログラムのような小説。「考速」は、言葉の、あるいは意味の可塑性への実験。そして「銀河帝国」は、限界を超え無理やりにイメージをひねり出すブレーンストーミングだ。2015/04/22
藤月はな(灯れ松明の火)
78
この人の本は決して理解しようとせずに作品毎に自分のお気に入りのモチーフを探してそれを如何に自分に馴染ませ、楽しむかが読む時の手段の一つと成り得るのだと思う。宇宙の誕生という太古から存在して消えてしまった「後藤さん(’s)」を巡る表題作はクオリア論やパラドックス論という哲学をモチーフにしつつも後藤さん(’S)の数学での捨象・補集合・ド・モルガンの法則などの数Ⅰ・A的書き分けによってごったくたになりやすそうな後藤さんを個別化しているのが面白い。この後藤さん’Sの個別化は人間の思考や個性の複雑性や多様性みたいだ2015/09/10
コットン
75
3回の繰り返し又は3回のバリエーションの繰り返しの意味は何かとか(ピタゴラス的視点か?)集合としての後藤さんや雌雄同体的後藤さん等の後藤さんオンパレードな話にRBG値をよむアナウンサーや理数的256や48ビットが挟み込まれるのだからおちおち読んでいられない表題作が斬新。そして次の『さかしま』の注1では256時間128分64秒と来るのだから、くすりと笑わせる理数的サービス精神が旺盛と感じられるが断片的にしか笑えないところが教養の無さを露呈しそう!2021/08/04
とら
73
理解出来た短編は「後藤さんのこと」「The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire」「墓標天球」「INDEX」で、どれも後ろの作品紹介に紹介されてある短編なのだ。これって比較的分かり易い作品なのか、それともただ単に編集者が紹介出来る程に読めた短編がこれらだけだったのか笑 やはり完全に理解出来るかといったら出来ないけど、でも文章で遊ぶ感じが本当に好きだ。そこだけでも読む価値はある。墓標天球はゾクゾクした。もっと円城さんの世界に浸かりたい。2013/07/15
みっちゃん
67
何とも摩訶不思議な表紙!頭・胴体・手足の数は合ってるの?とつまらない事を気にしつつ、頁を捲る私に襲いかかる単語の嵐!言語明瞭意味不明。言語の迷宮にご招待です。しかも「この話がどこへ向かうのかとんとわからない」って、それはこっちのセリフだよ、とツッコミながら【銀河帝国】のくだりでは結構笑いました。「こんなもの書いて楽しいですか」「ああ楽しいね」参りました、降参です。と言いながら、何だか痛快な気分で読み終えました。2013/06/24