内容説明
西暦2083年。人工神経制御言語・ITPの開発者サマンサは、ITPテキストで記述される仮想人格“wanna be”に小説の執筆をさせることによって、使用者が創造性を兼ね備えるという証明を試みていた。そんな矢先、サマンサの余命が半年であることが判明。彼女は残された日々を、ITP商品化の障壁である“感覚の平板化”の解決に捧げようとする。いっぽう“wanna be”は徐々に、彼女のための物語を語りはじめるが…。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まりも
110
余命半年を宣告され、残された日々をITP商品化の障壁である"感覚の平板化"の解決に捧げた開発者サマンサ。そんな彼女の為に仮想人格≪wannabe≫が彼女のための物語を作り出す話。この作者さんの作品は物凄く面白いんだけど、その分読後の疲労感もハンパないですね。生と死の残酷さ、理不尽さを徹底的に生々しく描写しているので、とんでもなく重苦しい内容になっています。死というものに一切の理想を持たせない、このドS加減が堪りませんわ。精神力をゴリゴリ削られるけど、読む価値はある。そんな1冊だったと思います。2016/05/09
ひさか
90
2009年8月ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション刊。2011年6月ハヤカワ文庫JA化。小説を書く仮想人格とそのシステムを作った女性を中心にしたお話。気が滅入るような展開だが、NIP(Neuron Interface Protocol)、ITP(Image Transfer Protocol) という設定や、仮想人格の認識等の話が興味深く、読ませる内容です。2018/05/24
巨峰
67
SFとおもって、タイトルから、温かい物語と思って読んだら全然違って、人の生き死にの問題がメインテーマでとてつもなく重かった。最近親戚が不治の病でなくなったばかりなので、彼女はこんな風だったのかなと思い、少し混乱した。SFであり、それ以上に哲学的であり、純文学的でもあったので、意欲作というのは間違いのない表現だと思いました。<物語>は、世界でたった一人のあなたのために書かれた作品であり、結局はあなたに充てたラブレターだったんだと思います。2024/12/14
ゆかーん
61
ハタ
56
第30回日本SF大賞・第41回星雲賞日本長編部門にノミネートされた本作長谷敏司著「あなたのための物語」は、思考人格を創る程発達した線密な近未来の世界観のもとで、仮想人格《wanna be》と、余命半年を宣告された開発者サマンサの「精神の死・肉体の死」をテーマにした作品だと思いました。プライドの高い彼女が、物語が進行するごとに肉体の機能が朽ちていき、孤独感・無力感に苦しむ様子には背筋が凍り、その心理描写に肉付けするように練られた人工神経制御というSF設定。そして問われる倫理・道徳性、人間としての存在意義。2015/08/21
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