内容説明
少女アリス・リデルの生まれたままの姿を撮影していたルイス・キャロルは、その合間に不思議な未来の話をはじめる…暗黒の検閲社会を描く表題作をはじめ、低IQ化スパイラルが進行する日本社会の暴走を描く「リトルガールふたたび」、夢と現実の中間にある“亜夢界”を舞台に、人間と登場人物との幸福な共存を力強く謳う中篇「夢幻潜航艇」など、SF的想像力で社会通念やカルト思想の妥当性を問い直す傑作中短篇7本。
著者等紹介
山本弘[ヤマモトヒロシ]
1956年京都生まれ。洛陽工業高校電子科卒。78年「スタンピード!」で第1回奇想天外SF新人賞佳作に入選。87年、ゲーム創作集団「グループSNE」に参加し、作家・ゲームデザイナーとしてデビュー。『時の果てのフェブラリー 赤方偏移世界』“サイバーナイト”などで人気を博す。2003年『神は沈黙せず』、06年『アイの物語』で日本SF大賞候補となり、注目を集める。「と学会」会長としての共著など、活動は多岐にわたる。ホームページは、山本弘のSF秘密基地(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きっしぃ
34
7編の短編集。最後の『夢幻潜航艇』はちょっとよくわからず流し読み。皮肉の効いた『リトルガールふたたび』、ミステリちっくな『七歩跳んだ男』が面白かった。次はがっつり上下巻の長編を読むかな。2018/07/08
ヨーイチ
30
粒子論だとか先進波だとかで修飾したファンタジーと定義したら怒られるかな。それ位亜夢界は何でもあり。因果律が逆進するなんて、まぁ恐ろしい。アイデンティティの喪失が死の世界ってことか。そこを乗れ超えると(乗れ超えなくてもいいのだけれど)良くできた、短編集。それにしてもこの人は本当にSF小説を愛しリスペクトしてきたのだなあ、と共感しきり。これくらい昔のファン意識が作品に出てくる人もめずらしい。2016/12/31
梨姫
27
なぜこの表紙にしたし。ロリータ表紙とは打って変わって、内容はファンタジックなSF短編集。 「アリスへの決別」はタイムリーな話で、児童ポルノ法がさらに進化して行き過ぎた世界。頭の中で思うことも犯罪になるのか。 まあ、少女をいくら芸術作品として扱っても、それが裸の少女であるだけでロリータ的要素はあるのだから、高尚なことを言っても所詮はロリコンの戯言に見えた。 作家の「シュレディンガーのチョコパフェ」を先に読んでいたので、時間が過去と未来に同じように流れる亜無界の世界を描いた短編が二つ入っていたのは嬉しかった。2013/08/27
タルシル📖ヨムノスキー
24
山本弘さんの短編集。表題作〝アリスへの決別〟は、不思議の国のアリスも好きじゃないし、こういう趣味もないので、よくわからなかったけれど、何か問題が起きた時に根こそぎ否定してしまうやり方は、頭が悪いと思う。〝リトルガールふたたび〟は、民衆が国をダメにしていく話。「バチャキ」現代にもいそう。いやいるね。でも世論を先導している黒幕がいたとしたら…。〝地獄はここに〟は、インチキ霊能力者の一言で、凶悪殺人鬼を目覚めさせてしまう話で、この本の中では、一番後味が悪かった。最後の2篇は、難しくてついていけませんでした。2020/02/19
そうたそ
23
★★☆☆☆ バラエティに富んだSF短編集。風刺色の強いものから、少しホラーチックなもの、がっつりSFまで様々な味が楽しめる。ただ傑出したものは特になく、という印象で、特に冒頭の二編なんてストーリーよりも風刺が先に出すぎており辟易した。「リトルガールふたたび」は、むしろオマージュのもとである「リトルボーイ再び」が気になった。残念ながら読む手段がほとんどないようで。「地獄はここに」はホラーテイストあふれる良品。個人的にはこれが一番好み。後半の作品はSF色が強くやや苦手。2018/07/15