内容説明
テオは17歳、アリスは5歳、そして二人は出会った。しかし、スペースマンと地上人の時の流れは平等ではない。二人を近づけた相対性理論のいたずらは、いつしか逆に二人を引き離してしまうことになる。だが、それもさらに恐ろしい悲劇の序曲に過ぎなかった!異様なシチュエーションの生んだ悲恋の物語を描いた表題作ほか、異星生物との心暖まる交流をつづる「遥かな草原に…」など、本格SF全7篇収録。
著者等紹介
栗本薫[クリモトカオル]
別名に中島梓。東京生まれ。早稲田大学文学部卒。77年中島梓名義の「文学の輪郭」で群像新人賞評論部門を受賞。78年『ぼくらの時代』で江戸川乱歩賞受賞。以後、作家・栗本薫、評論家・中島梓を使い分けて多彩な文筆活動を展開する。小説作品は、ミステリ、SF、時代小説、耽美小説と多岐にわたる。ライフワークともいうべき一大長篇ロマン「グイン・サーガ」は、2005年に100巻を達成したが、2009年著者病没により130巻が最終巻となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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眠る山猫屋
53
『ステファンの六つ子』は良かった。ブラッドベリの物語を読んでいるような、遥かに不思議な宇宙の贈り物。そして今回の目的『心中天浦島』は・・・やっぱり辛かった。慟哭しかないくらいに。スペースマンのテオが出会った8歳のアリスは『ジェニーの肖像』のようにテオを待ち、そして追い抜いていく。浦島効果の宿命。スペースマン仲間が語る「半年の天国と12年の夢を見れたんだ感謝して忘れな」という忠告を無視したテオが見つけたのは、甘美で残酷な地獄・・・。(続く)2024/04/07
ざるこ
45
7篇。著者初読み。おもしろい~。1981年刊行作に1篇加えた新版。胸キュンSF「遙かな草原に…」ある惑星で遭遇する生命体のかわいさに悶絶。からの悲しく美しい結末に思わず涙。不妊ウィルスで滅びた惑星に追放された女。荒れ果て廃墟と化した街で謎の声に導かれる「ただひとたびの」隣の惑星との戦争中、敵の1人と出会い心を通じ合わせたかに思われた最後に衝撃が待つ「優しい接触」つらすぎて茫然。懐かしくて優しくて素直なド直球SFという趣。情緒的で心に響く。だけどガツンと社会批判もあり。あとがきの昭和感が最高。他作品も読む!2022/06/17
まつじん
21
懐かしい香りがするSF短編集です。1980年代に発表された宇宙関連の作品って今から見ると妙にアナログちっくで読んでて恥ずかしくなってしまう気がするのはなぜなんでしょうねぇ。2010/11/13
かとめくん
16
「遙かな草原に…」人類よりも精神文化の豊かな知的生命体との付き合い方というのは確かに難しい。自己嫌悪と戦いながらになるだろうし。「ただひとたびの」種族を超えて進化していこうとする男女の姿が感動的。「優しい接触」LGBTが多数になった世界の未来かも。「心中天浦島」やはりこれが一番インパクトがあった。心情的には一緒に引き金を引いてた。「ステファンの六つ子」この子たちに幸あれと願う。「黒い明日」世界を乗っ取っちゃったら托卵できないよな~。「ファースト・コンタクトの終わり」中途半端な準備で臨むと失敗するという教訓2015/07/14
OHta
8
すごい!面白い!アッという驚きはないのだけれど、それでも面白い!『遥かな草原に……』には私の求める全てが詰まっていて、もはや「おお…」としか言えません。ペットを飼っている、または飼ったことのある方は是非。表題作は時間SFの大家ヤングと作風がダブる内容でありながら、全く異なる着地を見せるという、また別のリアル。出会いと別れ、理解と決別、変わる愛と変わらぬ愛……知っているんだけれども言葉にできないアレコレをSF的手法で浮かび上がらせた傑作短篇集でした。2017/04/28