内容説明
カリフォルニアの空の下、21歳の私立探偵アーロン・マッケルウェイは孤独な人々に出会う―“マイケルにさようならと伝えて”アーロンの今度の仕事は自殺した女性の最後の言葉を伝えることだった(「ハンバーガーの土曜日」)、郊外の食堂で電話中の少女が凶弾に倒れる現場に居合わせたアーロンが通話相手の依頼を受ける(「時には星の下で眠る」)等、青春の切なさとハードボイルドが見事に融合した青年探偵のシリーズ全11篇。
著者等紹介
片岡義男[カタオカヨシオ]
1940年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。1974年『白い波の荒野へ』で小説家デビュー。エッセイ、コラム、翻訳、評論、写真など多分野で活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くさてる
22
やっぱり片岡義男はとても独特で、とても怖い。残虐だったりエロティックだったりするはずの場面を描いていても、それはどれも空虚で、ハラハラしない。一枚紙を通して見るようなキャラクターたちが泣いたり生きたり死んだりしている。とてもよくできた紙芝居をみているようなむなしさがあるのに、それにもかかわらず、傑作ぞろいだ。人間の底の底まで見てしまったあと、ひとはこういうお話を書くのかもしれないと思った。表題作が、そういう意味でいちばん怖かった。2019/03/13
ネムル
4
リュウ・アーチャーの空気のような探偵でなく、冷たい水のようなアーロン・マッケルウェイ。私立探偵小説ながらも、事件がいずれも「らしく」ないのが面白い。カリフォルニアの空の下、カラッとサバッとドライな文体で人々の孤独を直視する、結構な劇薬小説だった。なかでも表題作は相当にショックだったが、意外なまでに暗い感じがしないのがまた凄い。傑作。2015/01/11
まんだよつお
4
主人公のアーロンは、カリフォルニアの21歳の私立探偵。探偵が主人公の小説だから、派手なアクションや華麗な謎解き、美女とのラブ・アフェア……が期待されるところですが、そこは片岡ワールド。アメリカ西海岸の夏のようにカラカラに乾いています。だけど、主人公をはじめ登場する女性たちの誰もが格好良いのですなぁ。また特筆すべき点は、カタカナ言葉の使い方。和製英語化された嘘八百の言い回しではない、「オン・ザ・ロックス」「ボールペイント・ペン」「ウォッシュド・アウト・ブルージーンズ」「キャシーア」の格好の良いこと。 2013/02/02
yourkozukata
4
カリフォルニアの空に青年探偵の透明な思いが溶ける。心理描写とかぜんぜんないのに、我がことのように共感してしまう。ミステリ史上もっとも描写されない探偵ではないかと思うが、おかげで事件や町が鮮明に浮かび上がるのだ。2009/06/08
motoroid
3
ハードボイルド探偵小説。主人公の探偵の内面描写は一切なし。スタイリッシュな文体と実験的なストーリーや人物像とか、とても面白く読めました。なんだか旅に出たくなるような後味を感じました。2012/01/24