出版社内容情報
解説:池上冬樹
内容説明
1986年10月、ベルリン。欧亜交易現地駐在員の神崎は何者かに襲撃された。親会社の共産圏への不正輸出が発覚、証拠湮滅を図る上層部の指令で命を狙われたのだ。殺人の濡れ衣まで着せられた神崎は壁を越えて東側へと亡命、そのまま消息を絶つ―それから五年、事件の関係者に謎の手紙が届けられ、神崎を追う公安警察もその情報を掴む。全員が雨の小樽へと招き寄せられたとき、ついに凄絶な復讐劇の幕が切って落とされた。
著者等紹介
佐々木譲[ササキジョウ]
1950年北海道生まれ。自動車メーカー勤務を経て、79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞、作家デビューを飾る。以後、オートバイ青春小説『振り返れば地平線』、ハードボイルド・タッチのサスペンス『真夜中の遠い彼方』など多彩な作品を発表し、注目を集める。88年には本格的な冒険小説『ベルリン飛行指令』を発表、作家として不動の地位を築いた。89年の『エトロフ発緊急電』では山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞をトリプル受賞した。歴史小説も手がけ、2001年の『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。2007年の『警官の血』は「このミステリーがすごい!」の国内編第一位に選出され、同作で三度目の日本冒険小説協会大賞に輝いた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Our Homeisland
22
かなりのボリュームがありましたが、飽きることなく引き込まれて読み終わりました。面白かったです、まれにはずれもありますが、道警シリーズを始めとしてほとんどが面白い作品を書く作家だと思います。張りつめた糸のような緊迫感がありながら情景描写の方も見事でした。ひどい連中が復讐されるという話ではありますが、それほどスカッとした読後感ではありませんでした。2021/09/01
あつし@
20
哀愁漂う背景に流れるトスカのアリア。雨に煙るベルリン、東京、小樽の夜の光跡…。音楽と映像を感じさせてくれながら船着場のラストシーンまでぐいぐい読ませてくれた。読後にはヒロインが夜の雨音に向かって呼んだ2人の名前が余韻となってこだましていた…。うーむ、こんなサスペンスが好きだ。四半世紀前の佐々木作品。早川書房の名作復刊版。とてもいい。感動した。2016/09/10
みすまりも
20
ベルリンの壁崩壊前のドイツ。会社の不正輸出を隠すため上司殺害の罪を着せられ、自らの命も狙われ東ドイツに逃げた日本人男性。そして数年後、生死もわからぬ彼から関係者に送られた手紙。小樽に集まる公安・ジャーナリスト・殺害された上司の娘・隠ぺい工作を諮った当時の同僚…そして復讐劇は始まった!!最終頁まで息をつかせぬ勢いで読ませる、あぁ~面白かった!佐々木譲氏の作品はやっぱスゴイ。2013/10/13
ツバメマン★こち亀読破中
18
まだ東西に分かれていた頃のドイツ。西ベルリンの駐在員神崎は親会社によるココム違反の隠蔽工作により、殺人の汚名を着せられたまま、東ベルリンに消える…。5年後、この事件の関係者に、小樽港へ来るよう日時を指定した手紙がソ連から届く。関係者が集合した小樽へ神崎は戻ってくるのか?厳戒の中、復讐劇が始まるのか?「ココム違反」「東西ドイツ」「ソ連」など最近聞かない言葉も出てきますが、そこは佐々木譲、イッキ読みでした〜!2022/06/02
あすなろ
18
池上冬樹氏の解説をお借りすれば、濃厚さ満点のムード漂うミステリー。確かに、内容も一昔前たが(ソ連、左翼に公安に加え、東西ドイツとココム取引違反という、今や知らない人が成人して多くなっている時代)、文章も作風も懐かしさを感じるミステリーだった。後、亀井勝一郎氏に端を発する「札幌のピューリタリズム、小樽のリアリズム、函館のロマンチシズム」という北海道の道南都市を的確に表現した文章は、内容と関係なく印象に残った。北海道、大好きなので!2014/03/19