内容説明
「ありがとう、秀樹!わたくしとお姉様は、あなたのことを決して忘れませんわ」―謎のウイルスにより人類が死滅した世界で、ひとりの百合少女の野望を謳いあげる表題作、前代未聞のファーストコンタクト「地球娘による地球外クッキング」、1979年を舞台にした不条理青春グラフィティ「エロチカ79」ほか、悩める人類に大いなる福音を授ける、愛と笑いとエロスの全8篇。日本SF大賞ノミネートの代表作、待望の文庫化。
著者等紹介
森奈津子[モリナツコ]
1966年東京都生まれ。東京女子大学短期大学部英語科、立教大学法学部卒。1991年、『お嬢さまとお呼び』でデビュー以後、『お嬢さまシリーズ』『花園学園シリーズ』などの少女小説で人気を博す。90年代後半からは一般文芸にも進出し、作品集『からくりアンモラル』(ハヤカワSFシリーズJコレクション)など、性愛をテーマにしたSF、ホラー、現代小説などの長短篇を数多く発表している
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
475
相変わらずおもしろくてあっという間に読める。とくに『地球娘による地球外クッキング』は著者のSF愛とギャグセンスにレズビアン要素を振りまぶした絶妙なバランスで、楽しい。あとは作者自身をネタにした『天国発ゴミ箱行き』も好き。作品によって過度な性描写があるので、読む人を選ぶのも相変わらず。ただ、作品によってはアイディア一発勝負で、展開とか落ちが単調になりがちなのもあるのがちょっと残念なところ。それでも店舗とギャグの感性が私にマッチしているのでよいのだ。2016/12/11
佐々陽太朗(K.Tsubota)
71
妄想とエロスとギャグがハイブリッドに同居するお笑い系耽美小説であった。いかん、新幹線車中で読み耽ってしまったぞ。あぁ、「耽る」とはなんとエロティックな言葉であろう。これはSF小説にカテゴライズしてよいのであろうな。そして心做しか官能小説でもある。いや、可成り官能小説であるぞ。ファンタジーでもあり、ロマンスといえなくもない。それとも風刺ととらえると一見軽薄と思えたものもぐっと深みを増してくるではないか。おそろしい小説だ。まあ、これほど「病んでいる」のだからここはSFとカテゴライズしておきたい。2013/01/25
巨峰
33
そうか、西城秀樹はそんなにも偉大だったのだ。百合風味のSF短編小説集。エロ度は、高度だがさっぱり系。で、どこかぬけていて、妙に明るい。なかなか楽しいアイデアの小説が揃っています。で、締めは山口百恵という、1966年生まれの作者ならではの、時代感覚が楽しめます。2011/05/20
drago @4月は名人戦。
32
SFチックで、ちょっとエッチで、ハチャメチャな短編集。バカバカしいけど何故か惹きつけられる、独特の世界観。後には何にも残らないけど、面白かった。『後生ですから・・・』は特に笑えた。下ネタを馬鹿にしてはいけない。桑田佳祐は、「サザンとして、歌舞く(本当の自分とは異なる、派手なパフォーマンスを演じる)ことをしようとすればするほど、作る曲は『下(しも)』の方に行ってしまう。」と語っている。芸術と下ネタは、切り離すことのできない密接な関連性がある。 ☆☆☆☆★2013/09/05
タカラ~ム
25
西城秀樹さんが亡くなられたというニュースを知り、まず思い出したのが本書。はじめて読んだのは単行本刊行当時だったと思う。謎の疫病で地球上のほぼ全人類が死滅した近未来。生き残ったのは千絵とジャネット。なぜ二人は生き延びることができたのか。それは、西城秀樹のおかけだった。表題作を含む8篇の短編が収録された短編集。本書をもって『西城秀樹さん追悼』と言うのは気が引けるが、まあこういう作品が出るくらい存在感が大きい方だったのだと思うことにします。2018/05/31