内容説明
君の国では、あの星をすばると呼んでいるのか…イギリス人のターナー博士の声が、遠い宇宙空間から流れてくる。博士と日本人の私は、ともに隔たった観測基地の研究者。孤独のなかで通信をかわすうちに友情がめばえたのだが、やがて私は、規則正しかった博士からの受信時間がずれていくことに気づく。表題作『星は、昴』をはじめ、ハードSFの旗手が、宇宙を舞台に多彩なアイディアと雄大なスケールで贈る、傑作短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Norykid
25
これほどに巨大なスケールの短編集があるだろうか。時代はかなり遠い未来。数千光年のスパンで語られる。太陽系、星団、天の川銀河、さらに銀河団、ボイドを通り越しその先へ、物語のスケールは拡大を続ける。壮大過ぎて想定不能。私の頭にエラーメッセージが表示される。しかし、それぞれの物語が多様なため、飽きさせることはない。特に『敗軍の将、宇宙を語らず』は極大スケールである。もはや、アゴが外れて戻らない。話がデカ過ぎて、リアルなドラマ性に欠けるも、これはこれで面白い。夜中にTVを消し、静かに虫の音を聞きながら読みたい。2016/06/26
yamakujira
5
宇宙空間を飛行する観測船から孤独に観測を続ける研究者同士が、タイムラグのある通信を通して友情をはぐくみながら悲しい別れを迎える「星は、昴」をはじめ、単独航行中に情報生命体と邂逅する「フライデイ」、ガス雲のような生命体が宇宙船を襲う「猟犬」など10編を収録した短編集は、謎の生命体あり、不死の思念体あり、宇宙戦争あり、「国産ハードSFの正面玄関だ」と煽るとおり、王道の宇宙SFだろう。でも、壮大なロマンを感じるはずの物語を面白いとは思えず、天文学の素養が乏しいせいか、どうにも読みづらかった。 (★★☆☆☆)2021/11/22
みずけろ
2
ハードSF短編。SFのハードな部分を正確に理解するのは放棄しても(だってわかんない)、とても面白かった!! 「フライデー」「コズミック・プリズム」が好き。そしてなにより表題作「星は、昴」がすばらしくいい。最後の届かない呟きに泣けた。良い読書体験でした。2015/06/15
なずき
1
再読。表題作が大好き。これだけ硬い用語に説明にをしているのに読後の感触がロマンティックで柔らかい。コズミックピルグリムのブラックホールに集結する星々のシーンが見ちゃいけないものを見ちゃった怖さで最高。道の道とすべきはの老子は168歳になったとき…の書き出しが好き。2021/02/18
ゆけちゃす。
1
宇宙を漂う何光年もの広さを持つ生命体の話とか、知的生命を誕生させて宇宙規模の戦争に巻き込もうとする何者かの話とか、何度も興亡を繰り返しては失敗し続ける文明とか、この短編集だけで何千年何万年の時間を描いているのか。30年前頃に書かれた短編だけど今読んでもとても面白い。2019/02/22