内容説明
核戦争後の放射能汚染は、火星の人間たちを地下の空洞都市へ閉じ込め、アンドロイドに地上で自由を謳歌する権利を与えた。有機アンドロイド―人間に奉仕するために創られたそれは、人間のテクノロジーをひきつぎ、いまや遙かにすぐれた機能をもつ都市を創りあげていた。だが、繁栄の影では、ひとつの神話がアンドロイドの間でひそやかに伝えられている。「神エンズビルが天から下り、すべてを破壊し、すべてが生まれる…」果して破壊神エンズビルは本当にあらわれるのだろうか?―人間対アンドロイドの抗争を緻密なプロットで描く傑作!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
304
1983年に書かれた神林長平の長編デビュー作。世界観、スケールの大きさ、時間軸のスパンの取り方の見事さとどれをとっても超弩級のSF大作。アーサー・C・クラークや、アーシュラ・ル・グインに迫るものと言ってよい。しかも、ここではまだエンターテインメントの要素が強いが、やがてこれがシリーズ第2作の『帝王の殻』、そして完結編の『膚の下』へと、しだいに洗練と文体の厳しさとを増してゆくのである。「おまえたちはなぜ生きているんだ…なんのために」という究極の問を問い続けながら。本編は、日本SF史上の輝かしい出発点だった。2013/02/07
詩 音像(utaotozo)
46
文庫化された1986年、佐藤道明のイラスト表紙旧版では何度も読み、布教用も含め、何冊も買った。当時、単行本で読まなかったのを激しく後悔。第三作出版時のシリーズ統一表紙版で再読。初読時に圧倒された、センスオブワンダーの怒涛の波、破沙から初めて出て里司が見る門倉京の描写、古墳の正体の発現、エンズビルの発動、等々への驚愕は、さすがにもう感じないが、いじめへの嫌悪とその打破の痛快さ、慎ましやかで平和な生活とその終末の予感、悲惨な最期かと一転慈悲深い破壊と創造などの心打つ描写には、今も涙は止まらず。2015/08/12
カノコ
41
おすすめいただいた本。地球で核戦争が起こり、火星に移住した人間。しかし、人間たちは地下空洞に追い遣られ、地上ではアンドロイドが栄華を極めていた。反転する価値観と、善悪の基準が奪われた世界。そこに違和感を持ち込むこと自体がすごくナンセンスだと言わんばかりのフラットな筆で語られる。見た目に違いのないアンドロイドを通じて、人間たちが繰り返し問う魂の存在意義や生きる意味。そこにきっと明確な解はなく、神も応えてはくれない。そう分かっているからこそ、それでもきっとわたしたちは祈るのだ。あなたの魂に安らぎあれ、と。2019/05/18
ntahima
40
読メやアマゾンを見る限りかなり高評価であるが、正直よくわからなかった。火星三部作の第一巻。時系列的に言えばこれがクライマックスで、巻が進むに従って時を溯る構成になっているようだ。誰かのコメントにあったように『帝王の殻』⇒『膚の下』と読み進み、もう一度、本作に戻れば、作中人物が度々口にする『あなたの魂に安らぎあれ』の意味がわかるのだろうか?『帝王の殻』は積んでいるので読んでみるが、『膚の下』はソウルでは大型書店でも入手困難。アマゾンは高いし、次回一時帰国時では読んだ内容を忘れてしまいそうだ。困った、困った。2011/09/21
ちぃ
38
神林さんの長編を読むのは初めて!こんな素晴らしい世界(ディストピアやら歪んだ世界観が好きなのです)を書く人の作品に今日までほとんど触れてこなかったことに感謝!これからたくさん読めるので!地上に暮らすアンドロイド、地底に暮らす人間、互いが互いを憎しみ合う世界で運命と戦うあるいは翻弄される生命の姿にぞわぞわさせられる。国内SFでこんないいのがあったなんてー*\(^o^)/*2017/01/28
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