感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
亮人
25
森下一仁の第一にして代表的なSF作品集。どの短篇も梶尾真治をより繊細にしたような叙情的SFで大満足。白眉は表題作。ただ高校生がカナヘビと心が入れ替わるだけの話だが、瑞々しい筆致で高校生の少年の視点が描かれる素晴らしい短篇。原付が盗まれる、同級生から取り留めのない手紙を貰う、悪友とお酒を飲む、全ての何気ないエピソードが清新できらきらと輝く断片としてちりばめられており硝子細工のようで清々しい。他にも「若草の星」「風の浜辺」「ヌクヌク」「濡れた指」「シナモン・ドロップス」などがお気に入り。2013/05/13
キキハル
23
読めて良かった! 30年以上も前のSF短編集だが、凪いだ湖に沈んだ宝石のようにひっそりと、でもきらきら輝く言葉たち。どれも良かったが表題作と「若草の星」「風の浜辺」「風船草の祭」「シナモンドロップス」がお気に入り。川又千秋氏の解説にもあったが「みずみずしい感性としなやかな叙情性」という表現がぴったり。確かにこんな誉め言葉は昨今の作家にあまり使えないかも。柔らかな想像が作り出すバケナメやヌクヌク、プアプアといった存在も親しいものに感じる。少々の気恥ずかしさと高揚した気分を抱え浸っていたい、そんな一冊だ。2014/02/20
アルビレオ@海峡の街
10
心の琴線に触れるような素晴らしい短篇集。読んでいる途中に「みずみずしさ」「初々しさ」を感じたのだが、あとがきで川又千秋氏が同じことを書いておられてびっくり。現代のような荒んだ時代(?)にこそ読んでもらいたい作品。「若草の星」いいです。2013/12/06
Mof
6
久々にあとがきまで気持ちの良い小説を読んだ。 展開の読めないSF作品集でありながら、登場人物も世界観も残忍さや鋭さがなくて、神経を尖らせずに楽しめた。呆気なく人が死ぬのだが、描写に残酷さはない。それがまたリアリティを感じる。 また主人公の少年たちのザ反抗期の行動や心理描写は、本物らしさがある。もっと書いてほしい。2025/01/21
SEGA
4
今では幻のような名品集ですが、「若草の星」は特に心揺れる一編。自分の冷酷さを自覚することで、人は優しくなるのかもしれませんね。2013/08/10