内容説明
美しき女性に化身して、召使い兼子供の語学教師として英国人の家庭に入りこんだ妖魔。この妖魔に連れられて、英国人の少年デイヴィッドは地底の蛇の都に行くが…。多感な少年の成長物語「龍の都」ほか、死に瀕したテロリストと正体不明の少女との不思議な関係を描く「暗黒の星」など、ファンタジイ界の女王が、現実のインドを微妙に変容させた世界の過去、現在、未来をエキゾチックに語る連作短篇集。
目次
龍の都
炎の虎
月の詩
運命の手
象牙の商人
輝く星
暗黒の星
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
83
イギリス統治時代から未来まで、インドを舞台にした7つの幻想夜話。猥雑な色街、古代遺跡、密林、ボリウッド映画…濃密な空気に包まれるような不思議世界。神話や宗教を絡ませて、インドでなければ紡ぐことのできないファンタジーになっている。7つの夜は7つのチャクラに呼応しているようにも思えた。2020/08/01
ニミッツクラス
24
87年(昭和62年)の440円の文庫FT初版。84年底本の“インド幻想夜話”の7話完訳でカバーは巻頭作のイメージだろう。本邦で87年だとノンシリーズが幾つかと“アズュラーン”が出ているが、入り数の多い短編集は本書が実質初めてとなる…刊行一月後に2刷が出たのは著者の人気なのだね。巷に溢れるファンタシーとは一味違い、“剣と魔法”とか言う話ではない。巻末の表題作に至っては宇宙ステーションから救命艇で脱出したテロリストの話だ。インドと言えばカースト制と映画産業…それらの美しくも哀しい抒情話も胸を打つ。★★★★☆☆2025/09/29
rinakko
14
タニス・リーの描くインド、とても素敵だった(とりわけ精霊の如き美女たちの姿と言ったら…)。妖しの呪力と幻想に満ちた魅惑の世界…と思いきや、人の世の真実が美も醜も分かちがたいままにどろりと描かれてそこにある。と、そんな連作短篇集。夢の紗が取り払われた後の身も蓋もなさには慄くけれど、それと同時に心の中のどこかが得心してしまう。…哀しいかな。無情な物語を見通す透徹した眼差しが、一見突き放すようでありながら全てを許している…とも思えて、私はそこで慰撫された。殊にお気に入りは「龍の都」や「月の詩」、「運命の手」。2015/06/27
sakadonohito
11
インドを設定に使ったファンタジーとSFぽいもの中短編集。自分には合わないというか内容に入り込めないものが多かった。2022/07/12
あ げ こ
10
夜に満ちる香気を含み、物語は舞う。自在に。妖艶に。巡り続ける事の過酷さを。果てしなさを。試練の凄絶さを。覚醒の瞬間の、その煌めきの忘れ難さを。物語は伝える。業を。変化を。輪廻を。その深さを。醜さを。哀しさを。皮肉さを。脱ぎ捨て、或いは耐え抜いた先に待つ、安寧と幸福を。その美しさを。豊かさを。不可思議さを。物語は見せる。甘やかに。残酷に。鮮やかに。己が身に刻み込まれたもの…嘆き、怒り、痛み、喜び。物語が誘う至福にて得たもの。例え輪郭を失っても、生き続ける。それほどまでに彼等は濃く、強い。夜が残す夢のように。2016/05/16




