内容説明
かつてこの世が平らかだった頃、冷酷無残な女王と死者との交わりに両性具有の子が生まれ、シミュと名づけられた。シミュは長ずるに及んで、我が身の秘密を知る―汚穢と禁忌に彩られた出生に死の王ウールムが一役買っていたのだ!死の王に仇をなすため、シミュは闇の王アズュラーンの助けを得て〈不死の都〉を築きあげた。これを知った死の王は、シミュのかつての恋人にして不死身の魔術師ジレクを〈不死の都〉に差し向けるが…。2人の美青年の倒錯した愛と退廃の美を軸に、死の王と闇の王との権謀術数を描いた、タニス・リーの最高傑作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
88
死者と交わり子を成さねばならない女王ナラセンは、《死の王》相手に一歩も引けを取らず、逆臣に毒を盛られて死ぬ間際でさえ屈服しない。その遺児シミュレは墓穴に捨てられ、妖魔に拾われ、豹やキツネや野鹿の乳で育てられやがて不死の都を築く。一方、遊牧民の王族に生まれ、母の犠牲により不死身となったジレムは死の魔術師を目ざす。この二人の貴種流離譚かな~と思っていたら、主人公は誰と決められない展開に。母性や処女性がやたら「死」に絡んでくる所や、15才の魔女ライラスの過剰な自意識とプライドなど、危険な香りいっぱいの伝奇物語。2018/12/21
Hugo Grove
20
長い長い物語だった。しかし面白かった。美しく残酷で魅力的な世界。神々と妖魔と人とが別々の世界に住んでいる。そのそれぞれの地をまたぎ超える存在が物語を生み出して行く。この世界観にもっともっと 浸っていたい。2014/02/28
ノベツ
8
冒頭から呪いがえげつなくてドン引き。前作では邪悪なのはアズュラーンで人間は被害者だったが、本作では人間の邪悪さが際立つ。読んでて普通に辛い。しかしそこから始まる捻じれた運命は読みごたえ抜群! 長文感想↓ https://note.com/nobetsu/n/n73faa184e4df?sub_rt=share_pb 2025/07/21
ayakat
6
ボリュームすごかった。文体として読みにくいわけじゃないんだがちょっとずつ読んでいてやたらと時間がかかったわ。高カロリー本。文学の形をとったラファエル前派というか世紀末象徴派というかまあそんな感じ。めくるめく物語。女性の方がキャラ立っててかっこいいな。ナラセン、ライラス、カザフェ、ハーバイド。2011/01/11
madhatter
5
新装版で再読(加藤絵…!)。シミュとジレクの愛が苦く、やり切れない。ジレクの復讐の凄惨さや、カザフェの末路の意外性にも感服したが、何より、あのエシュヴァはシミュだったかもしれないという挿話に衝撃を受ける。シミュの復讐を望んだジレクだが、復讐とは本来相手の自分に対する関心の上に成立するはずだ。だが、エシュヴァとなって感情を失ったシミュの無関心は、逆説的ながら彼への最大の復讐だったろう。なお、最早叶わぬことだが、この物語は浅羽訳で読みたかった…文体、特に会話文に品がなく、所々日本語としても怪しい。2010/02/26