出版社内容情報
惑星に建てられる宇宙飛行士の墓碑に魅せられた男を描く表題作など、現代中国を代表する作家の名品12作を収録したアンソロジー!
内容説明
幼い頃、私は火星の北極冠で、黒く光る四角い石碑の数々を見た。それは宇宙で死んだ飛行士たちの墓碑だった―星々に建つ墓碑に魅せられた男を描く韓松による表題作、火星からの帰省ラッシュをコミカルに描いた馬伯庸の「大衝運」、ゾンビになった青年が恋人を守ろうと奮闘するさまを叙情たっぷりに綴った阿缺「彼岸花」など、腕利きのアンソロジストが選び抜いた12篇を収録。無限の想像力が煌めく中国SFアンソロジー。
著者等紹介
倪雪〓[ゲイセツテイ]
中国、広州生まれ。中国各地で暮らしたのちに、11歳の時に家族とともに英国に移住。ロンドン大学で英文学を専攻し、卒業後、出版業界でキャリアをスタートさせた。同時に、中国の小説の英訳も手がけるようになった。2008年に中国に戻り、2010年より中国の伝統文化やポップカルチャーについて執筆を開始。ノンフィクションからガイドブックまで幅広く手がけ、中国文化を世界に紹介している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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本の蟲
15
中国SFは『三体』だけじゃない。そんな想いから中国人が編み、英訳したSFアンソロの邦訳版。各短編のアイディアは、決して目新しいものではない。しかし訳や選考基準に「中国らしさ」を重視した作中の文化や風俗、思想は、文学における「異化」の役割を果たしていて斬新な印象を受ける。純粋にエンタメとして楽しいゾンビSF「彼岸花」と切れ味鋭い極短編「恩赦実験」。別アンソロで既読だった「宇宙の果ての本屋」がお気に入り。英訳に苦心したという固有名詞や表現も、同じく漢字文化圏の恩恵でなんなく受け止められる2025/05/04
もち
10
「俺たちから離れるのはその子のためなんだな?」◆ゾンビが人間を追い落とした世界。肩に植物を宿した個体が、人間の女性との交流を試みる。食料を運び、脱出を手引きし――。真相が二人を裂き、思惑の花は咲き、あり得た未来を割く。(『彼岸花』)■バランス良く揃えた中国SFアンソロジー。惑星のネーミングから練り上げた圧巻の恋愛SF、兵士の覚悟と顛末に息を呑む軍事SF、火星の春節をめぐる過酷な帰省SFなど、粒揃い。B級のメタな笑いと思わぬどんでん返し、王道の感動まで叩き込む、全部盛りゾンビSFに感服した。2025/05/05
イツキ
3
編者が中国SFの様々な種類を紹介したいと言っているだけあり非常に個性豊かなアンソロジーとなっています。中国人の国民性や文化などに深く根ざしたものもあればゾンビ映画をイジりながらコミカルに進んでいくゾンビ物まであり非常に面白いです。中国の文化に疎くても各作品のあとに編者による簡潔でわかりやすい解説がついているのでそれもありがたいですね。2025/05/17
いると
3
東洋だからか中国の作品は文化が違えど欧米とは違う日本の作品たちと似た空気感が匂う気がする。「折りたたみ北京」を読んだときにそう思った。このアンソロジーもその感覚はあり、表題作や「宇宙の果ての本屋」等茫漠とした読後感のあるものが多かった。 収録された話の中で一番長いコミカルな始まりのゾンビものは「ウォーム・ボディーズ」かなと思ったらブラッド・ピットの名前が出てくるたびに「ワールド・ウォーZ」を思い出し、話の先に腹落ちがした。「彼岸花」といえば秋に咲く深紅の花を思うが、ここでのイメージネモフィラに近い。2025/05/14
YSHR1980
3
ゾンビアポカリプスな「彼岸花」がいちばん好き。春節の大移動になぞらえた「大衝運」や、共通点のありそうな「博物館の心」「宇宙の果ての本屋」も良かった。2025/05/01