出版社内容情報
AIの未来を描く中篇「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」他、全9篇を収録。『あなたの人生の物語』に続く第2作品集
内容説明
AIの未来の姿・可能性を描いた傑作中篇「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」、人間がひとりも出てこない世界で、その世界の秘密を探求する科学者の驚異の物語を描く表題作、『千夜一夜物語』の枠組みを使い、科学的にあり得るタイムトラベルを描く「商人と錬金術師の門」、創造説テーマの秀作「オムファロス」ほか、科学・思想・文学の最新の知見を取り入れた珠玉の全9篇を収録した、世界最高水準の作品集。
著者等紹介
チャン,テッド[チャン,テッド] [Chiang,Ted]
1967年、ニューヨーク州ポート・ジェファーソン生まれ。ブラウン大学でコンピュータ・サイエンスを専攻。1990年に発表したデビュー作「バビロンの塔」がネビュラ賞を受賞。その後、発表される作品は高い評価を受け、SF界最大の文学賞であるヒューゴー賞を、「地獄とは神の不在なり」「商人と錬金術師の門」「息吹」「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」で4度受賞。現代SF界を代表する作家である
大森望[オオモリノゾミ]
1961年生、京都大学文学部卒、翻訳家・書評家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
78
今までSF小説はあまり読んだことがないのだけど、その中で好きだったのはハーラン・エリスン。そして何とは無しに題名に惹かれて読み始めたら、このジャンルに疎いわたしでも読めた。科学的なシチュエーションでも底にロマンティックな(人間)が描かれていて思わず胸が熱くなる。「いい子でね。あいしてる」この言葉はきっと一生忘れないだろう。SF作家、二人目の贔屓が出来て嬉しい。2024/02/28
はっせー
49
本書はテッド・チャンが描くSF短編集となる。全9篇はどれも読みやすくかつ想像力を掻き立ててくれるものばかりであった😆どの短編にも通じるのは、読んでいて純文学を感じさせてくれるSFと言う点。出来事より主人公や登場人物の内面を綿密に描いている気がする。そのためSF独特の突拍子のない設定やストーリーの流れはなかった。本書を一言で例えると「雪原のようなSF」ではないかと思った!2025/03/13
Shun
42
9作収録のテッド・チャン作品集。作品レベルが高く寡作で有名な著者作品が読める貴重な1冊。SF小説でしか味わえない類の未知の知性や未来像を見ることができる。表題作「息吹」では、人間が登場しない世界で知性を有する一人の科学者が探求しようとしている対象に好奇心を刺激され、やがて至るであろう深い感動はSFならではの深遠さと言えそうだ。「大いなる沈黙」で人類以外の知性について視野が広がり、「偽りのない事実、偽りのない気持ち」では言語能力についてAIとの関連性を考えさせられる。今後SF思考はますます重要となりそうだ。2023/08/20
ひさか
40
2019年12月早川書房刊。訳者あとがきに加筆して、2023年8月ハヤカワSF文庫化。商人と錬金術師の門、息吹、予期される未来、ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル、デイシー式全自動ナニー、偽りのない事実,偽りのない気持ち、大いなる沈黙、オムファロス、不安は自由のめまい、の9つのSF短編。一読したところでは、偽りのない事実,偽りのない気持ち、オムファロスが楽しめた。アイデアは買うが、その展開が淡々としていることもあって薄いベールがかかったような世界観に共感は少ない。2回、3回と読むと馴染むのかも。2023/10/30
geshi
39
SFの最先端を行く短編集なのに圧倒的読みやすさと万人に開かれたテーマ性がある。『息吹』語り手が何者か分からず理解しようとする行為そのものが知的欲求というテーマに見事に結びついている。『ソフトウェア~』人間に近くなるAIの進化と人間側の受容の物語なのに子育ての話にも見えてくる。『偽りのない事実~』全く違う二つの話の構成でえぐい事実を突きつけ、問題をどう乗り越えるかを人に問う。『不安は自由のめまい』平行世界を見られるようになった人々の不安と動揺がリアルで、最後に人生を選び取る人間賛歌に着地するとは。2023/10/02