出版社内容情報
〔ヒューゴー賞受賞〕アンディ・ウィアーやN・K・ジェミシンなど、6人の人気作家が未来を描く珠玉のアンソロジー。全篇初邦訳
内容説明
科学技術の行き着く未来を六人の作家が描く。クラウチは人間性をゲーム開発者の視点から議論し、ジェミシンはヒューゴー賞受賞作で地球潜入ミッションの顛末を語り、ロスは滅亡直前の世界に残る者の思いを綴る。トールズが子に遺伝子操作する親の葛藤を描き、トレンブレイが記憶と自意識の限界を問いかければ、ウィアーが量子物理学でカジノに挑む方法を軽妙に披露する。珠玉の書き下ろしSFアンソロジー。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ざるこ
33
6篇。サブタイトルに”未来を視る”とある。SF界での未来はいつも大概ろくでもなくてAIの超進化も地球の環境汚染も最悪なことになっている。現在や近未来への問題提起だろうが実際小説を辿るような事態に見舞われる時、心底恐ろしくなる。お気に入りは断トツで「夏の霜」仮想空間のAIの人格が進化する。ゲームキャラを生み出した人間とAI人格の信頼と疑惑の入り混じる関係。冒頭とラストの景色は同じなのだが立場逆転とも言える状況に戦慄する。地球最後の脱出者となる植物学者たちの仕事ぶりが静かに展開する「方舟」も好き。満足度高し。2025/05/18
アプネア
18
SFアンソロジー6篇。N・K・ジェミシン、ベロニカ・ロスが良かった。「エマージェンシー・スキン」:環境破壊によって地球に住めなくなる状況に陥った人類。支配者層は、別の太陽系へ移住し、長い年月がたった・・・。富を握る上級市民が地球を去った途端、地球が浄化されるという。なんとも皮肉の効いた作品。「方舟」:数年後に小惑星が衝突する世界。人類は方舟に動植物の遺伝子を詰め込み宇宙に出る。そこには滅亡する地球に残る人たちも・・・。やはり生きたいと思うこの世界の素晴らしさ。感情の変遷が、静かな感動を呼ぶ。2023/03/19
ふりや
13
科学技術が行き着く先には一体どんな未来が待っているのか。ブレイク・クラウチが編纂し、6人の海外SF作家が競演した豪華なアンソロジー。「未来」というすごく大きな括りのテーマなので、各作品のバラエティもとても豊か。良くも悪くも実現してしまいそうなテクノロジーだったり、地球の終末だったり、軽妙なエンタメだったり。どれもクオリティが高く楽しめました。印象に残ったのは、ブレイク・クラウチ『夏の霜』N・K・ジェミシン『エマージェンシー・スキン』ベロニカ・ロス『方舟』アンディ・ウィアー『乱数ジェネレーター』など。2022/12/16
ふかborn
10
人気SF作家の詰め合わせ。まずはアンディ・ウィアーに目を引き付けられるけれど、相変わらず軽快で女性が生き生きとして奸計を練っているのを読むと、う~ん良くも悪くも予想通りで、まずまずと言ったところである。何番煎じか分からない、地球に隕石落っこちてきて人類が深宇宙に逃げ出すっていうベロニカ・ロス「方舟」が、なんとまぁ、一番感動するんですよ。植物の遺伝子を収集する植物学者、園芸学者らがみんな血縁者がいなくて「みなしご達」って呼ばれているのが、また悲しくなってくる。主人公の最後の決断を変えさせる出来事が、もう涙。2023/02/13
もち
10
「こんなにも特別で、完璧で、ありえそうもない共同作業を」◆小惑星の衝突が迫る中、種の鑑定に励む研究者たち。その一人、サマンサは脱出船には乗らないつもりだ――。気紛れで手にした花と、ユリの博士との出会いが、彼女を回想へと誘う。(『方舟』)■技術と未来をテーマとしたSFアンソロ。静かに身を裂く、家族をめぐる切実さに涙する終末SF、皮膚の意味をシニカルに追求した宇宙SF、NPCの変異と進化がとんでもない結末に至るゲームSFなど、いずれもレベルが高い。2023/01/14