出版社内容情報
推理作家のクローンとして図書館の書架に住む男スミス。謎を携えた令嬢が彼のもとを訪れて……。巨匠の遺作となったSFミステリ
内容説明
図書館の書架に住むE・A・スミスは、推理作家E・A・スミスの複生体である。生前のスミスの脳をスキャンし、その記憶や感情を備えて、図書館に収蔵されているのだ。そのスミスのもとを令嬢コレットが訪れた。父に続き兄を亡くした彼女は、スミスの著作が兄の死の鍵を握っていると考え、スミスを借り出したのだ。本に込められた謎とは?スミスは事件の調査を始めるが。巨匠ウルフの遺作のSFミステリ。
著者等紹介
ウルフ,ジーン[ウルフ,ジーン] [Wolfe,Gene]
1931年ニューヨーク生まれ。兵役に従事後、ヒューストン大学を卒業。1965年、短篇“The Dead Man”でデビューを果たす。「アイランド博士の死」(1973)でネビュラ賞を受賞する。1980年より刊行が開始された四部作“新しい太陽の書”(早川書房刊)は、世界幻想文学大賞、ネビュラ賞、ローカス賞など各賞を受賞し、SF/ファンタジイ史上最高のシリーズと評されている。2015年、『書架の探偵』を刊行。続篇も予定していたが、2019年、87歳で逝去した。ウルフの遺作にあたる
酒井昭伸[サカイアキノブ]
1956年生、1980年早稲田大学政治経済学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
み
21
何かで気になった作品、初読みの作家さん。余り手にしない近未来設定でSFテイストだったからか、ちと楽しめず…。作家さんのクローンを図書館に所蔵って、ヒトをヒトとも思わない発想のような。2024/05/03
緋莢
15
22世紀。アメリカの図書館では作家の脳をスキャンし、複生体(リクローン)を作成。その記憶や感情を備えて、所蔵していた。推理作家E・A・スミスの複生体は、ある日、令嬢のコレットに借り出される。その目的はコレットの死んだ兄が、死の直前にE・A・スミス『火星の殺人』を何故、彼女に託したのか?というものだったが、複生体には、その作品を書いた記憶は無く…解説で書かれていますが、最初の発想は「人間をできるかぎり本に近づけたらどうなるか」 というものだったそうです(続く2020/09/06
北風
15
本に造詣が深い、ビブリア古書店みたいな感じかと思っていたが、本棚に収められたミステリ作家のクローンが探偵をする。図書館にいけば、小説家に会える! 記憶も継承している。だけど、ディケンズや太宰治には会えない。DNAを採取できなかったから。かなり面白い設定だし、途中思いも寄らない展開が起こるのだけれど、いまいち設定を生かし切れていないような。ミステリ作家がほんとの殺人事件を解決する、というようなものとは一線を画する展開があってしかるべしかと。いまいちな肉じゃがをカレーにリメイクしたような残念な感想。2020/07/04
SINKEN
11
【総評】★★★☆☆【感想】全体的なシチュエーションで言えばSFなところも大いにあるのだけど、探偵っていうタイトルから、どちらかというとミステリなのだと思う。語り口も何となく古めかしいものがあり、謎解きの部分も往年の探偵ものそのものといった感じ。だからと言って否定的なわけではなく、まぁそれなりに面白かった。でも一番肝心な部分はあまり明かされてなかったかな。なぜあそこに行けるようになったんだろう。。。2020/11/06
medihen
11
図書館に棲む推理作家のクローンが探偵役という設定がまず魅力的。しかも書いたのがジーン・ウルフ、ということでさぞかし読みごたえがあるだろうと取り掛かった。結局、形の上では事件は解決してしまうのだけど、探偵が彷徨う世界の作り物感や異様なガジェットが気になる。それでいいのか?それだけなのか?と疑心暗鬼にかられるのは、<新しい太陽の書>に苦労した体験から。2020/11/06