出版社内容情報
12歳未満の子供は人間と認められない……衝撃の近未来SFほかを収録する傑作選最終巻
内容説明
人間と認められるのは12歳以上、12歳未満の子供は人間と認められず、狩り立てられてしまう…衝撃のディストピアを描いた表題作を、新訳で収録。長篇『ユービック』と同一設定の中篇「宇宙の死者」、ディック短篇の代表作として知られる現実崩壊SF「地図にない町」(新訳)、侵略SF「父さんもどき」、書籍初収録作「不法侵入者」、晩年の異色作「シビュラの目」ほか、幻想系/子供テーマSF全12篇を収録する傑作選。
著者等紹介
大森望[オオモリノゾミ]
1961年生、京都大学文学部卒、翻訳家・書評家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
431
12の短篇を収録。短篇だけに、そこに壮大な世界観が見られるというわけではない。どちらかといえば、ややシニカルな未来像が描かれる。篇中で「妖精の王」は、ファンタジックな趣を湛えた佳篇。一方、「不法侵入者」、「父さんもどき」、「新世代」、「ナニー」などは近未来のディストピアを描く。このあたりディックの世界観はやや悲観的だ。表題作「人間以前」は、人工中絶をSFの視点から問いかけたもの。問題意識としては、最も先鋭的だ。切り捨てられる側の恐れと不安を基軸として表出してゆくディックの人類観はあまり肯定的ではない。2020/01/01
新田新一
31
フィリップ・K・ディックの短編集。子供を主題にした作品やファンタジーが収められています。エンターテインメントでありながら、人間とは何かという重い問いを含んだディックの作品は、いつ読んでも心を揺さぶられます。ここに収録された作品は全て傑作で、読む価値があると思いました。表題作は12歳未満の子供は人間と認められず、当局に捕まるという悪夢的なディストピアを描いた作品。寒気がする内容で、今の社会がそこに近づかないように祈りたいです。「欠陥ビーバー」が一番好きな作品。ビーバーが主人公のけったいな作品で、笑えます。2024/10/16
大粒まろん
28
面白かったです。このんん?となる感じが好きなのね 若島正氏 浅倉久志氏 大森望氏の3人の訳が楽しめた 個人的には浅倉氏が好み(村上春樹氏にも影響を与えた人なだけにそりゃそうなんだけど)物語は地図にない街 父さんもどき ナニー 人間以前が楽しく読めたかな 割と全体的に軽い読み口 とはいえ この曖昧さや不穏さが仄かに作者らしくて 楽しかった。2024/02/04
おにく
28
ディックの作品は当たり外れが激しいと言われますけど、自分はちょっと残念な作品に出会った時「これはディックだ。あの“高い城の男”を書いたディックの作品なんだぞ。」と、秘密の呪文を唱えます。この“人間以前”は、子どもをテーマにした短編が多いのが特徴で、未来の少し変わった日常を当然のように受け止める子供たちや、家政婦ロボや核シェルターなど“お隣よりも新製品を!”と、子供の目線から見た消費社会のアイロニーなど、当時の時代背景の不安な事柄が、未来にはもっと深刻になるぞ。と言う警鐘がちょっぴり大仰に描かれています。 2017/10/09
吉野ヶ里
28
面白い短編集だった。『地図にない町』こう来たか。メモ:メイコン・ハイツ『妖精の王』ボケた老人の話かと思った……『この卑しい地上に』なんだこれなんだこれ…『欠陥ビーバー』何故ビーバーでやったのか。謎。よくわからん話だった。『不法侵入者』よくあるやつ。『宇宙の死者』や、面白い世界観だった。ユービックも読むわ。メモ:半生者。『父さんもどき』怖い。なんかパラサイト思い出した。『新世代』これも面白い世界観。ロボットの規則で育った人間。世代の変わり目の話。2016/03/13