内容説明
ブラッドベリの幻の作品集として名高い処女短篇集『黒いカーニバル』から精選した作品にウィアード・テールズなどのパルプ雑誌に発表された作品を加えた初期傑作選。深夜のカーニバルで、団長が乗った観覧車がくるくる逆まわりするたびに奇怪なことが起こる「黒い観覧車」、かつての想い人である少女を失った湖を男が婚約者とともに再び訪れる「みずうみ」など、叙情SFの名手が贈る恐怖と幻想にあふれた24篇の物語。
著者等紹介
ブラッドベリ,レイ[ブラッドベリ,レイ] [Bradbury,Ray]
1920年、イリノイ州生まれ。1947年に最初の短篇集『黒いカーニバル』が刊行され、1950年にはブラッドベリの最高傑作といわれる『火星年代記』が、1953年にはディストピア的未来世界を描いた長篇『華氏451度』が刊行された。そのほか、『刺青の男』(1951)、『太陽の黄金の林檎』(1953)、『よろこびの機械』(1964)と、奇想に満ちたイメージ豊かな短篇集を発表しており、幻想作家ブラッドベリの名声と評価を不動のものにした。2012年、91歳で死去
伊藤典夫[イトウノリオ]
1942年生、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
108
ブラッドベリの初期のころの短編集で二十数編の作品が収められています。SF的な感じというよりも幻想的な感じあるいはダーク的なものが多くある気がしました。「10月はたそがれの国」を思い起こしました。印象に残ったのは最初の「黒い観覧車」と「みずうみ」です。また「刺青の男」は作品集で同名の本がありますが、内容は異なっています。2025/03/13
かみぶくろ
101
ブラッドベリの初短編集。若かりし頃の巨匠の初々しい想像力を堪能できて素直に楽しい。なにより特徴的なのはその叙情性。どの作品にもじんわりと詩的な美しさが滲む。どこか懐かしさを感じるのもそのためか。ザ・翻訳SFとも呼べそうな独特な訳も慣れてくると好きです。2019/03/11
かりさ
82
もう夢中で読みました。私の読書人生においてこんなにも心震わせてくれる作品に出逢えたことは大いなる財産であり、宝であり、つまりは読めてこれほどの幸せはないと打ち震えているところ。知らない世界があるというのは未知の希望と光とそして出会えてなかった不幸と…常々思うわけですが、ブラッドベリを読んでこなかったというのは間違いなく勿体ないことで、今こうして機会を得て読めたことに幸せに溢れています。幻想と奇想の世界の中に情味豊かな表現が紡がれ織り込まれいることもブラッドベリの魅力でしょうか。続く2019/01/22
kinkin
79
ずいぶん昔に「火星年代記」をはじめて読んでとても気に入ってその後何度も読み返した。短編集だがカーニバルというだけあって様々な話に溢れ返っている。いきなり「黒い観覧車」で胸を掴まれた。またどの話も1940年台から50年台に書かれたものとは思えないくらい想像力ときらびやかさ、怪しさに満ちていると思う。スティーブン・キングのホラーと似たようなところがあるようでブラッドベリのほうがずっと詩的で叙情にあふれている。翻訳なので読みにくいと感じるところがあるがそこは読み手が自由に捉えたらいいと思う。図書館本2016/10/06
mii22.
78
読み始めるとすぐどこか時空のねじれたような不思議な読み心地だったり、不穏で嫌な感じで死の匂いが漂ってきたりする。ブラッドベリだし、SFだし、黒いカーニバルなんだから当然なんだけど。結末がある程度予想できるものも、決してハッピーエンドは期待出来ないから心がざわつく。大好きな短篇「みずうみ」を見つけたときの嬉しさに、やはり私の好みが幻想的で美しく密やかで哀しみに心がしんとするようなお話なんだなと再確認した。2020/10/30