内容説明
最愛の妻を何者かに拉致されたエルリック。魔剣ストームブリンガーを手に探索の旅に出るが、“新王国”の地は、“混沌”と手を結んだパン・タン=ダリジョール連合軍に侵略されつつあった。戦乱の渦中に否応なく巻きこまれるエルリック。だがこれらは、迫り来る“混沌”と“法”の怖るべき戦いの前哨戦にすぎなかったのだ!「魂の盗人」「闇の三王」「忘れられた夢の隊商」の3中篇と、表題長篇『ストームブリンガー』収録。
著者等紹介
ムアコック,マイクル[ムアコック,マイクル][Moorcock,Michael]
1939年イギリス生まれ。1961年、エルリックものの最初の短篇である「夢見る都」を『サイエンス・ファンタジイ』に発表し、斬新なキャラクター設定で読者を瞠目せしめる。続いてホークムーン、エレコーゼ、コルムなどエルリックの転生ともいえる主人公たちのシリーズを立て続けに発表、『永遠の戦士の世界』を作りあげた
井辻朱美[イツジアケミ]
東京大学人文系大学院比較文学科卒、白百合女子大学文学部教授、作家、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Akito Yoshiue
10
終盤の疾走感と吸引力がものすごい。絵になる場面が目白押しだった。野田昌宏は「SFは絵だ」と喝破したが、ムアコックを読むとファンタジーこそ絵だと思わされる。2022/07/10
to_chan
8
これまでは短編中編だったシリーズが、最後の「ストームブリンガー」は長編サイズで《混沌》と《法》の最終決戦が描かれていて、盛り上がる。展開が唐突というか、戦いの手順も道理も、とにかくこうだってきまってるからこうなんだよ!みたいな。…うまく説明できないけど、そこがエルリックが奉仕する《運命》の虚しさと相まって気持ちよい。最高の中二病小説であった。次の巻、どうなってんのこれ。2023/03/05
しまっち。
7
うわ~、やっぱりこんな救いのない結末。でも、これ以外ないのか・・・とも思う。最後は映画のエンディング のように、「完」の文字がどどーんと見えた。結局は課せられてしまった役割を全て引き受けて行動したエルリック。物悲しくも力強い。ちょっと一息ついてから続きを読む事にしよう。2017/11/08
isfahan
7
面白かった。ひかわ玲子の解説ではないけれど中高生の頃に読んだらどれだけはまっていたんだろうという安定の面白さ。エルリックは昔の欧州系英雄物語の主人公のような不条理な悲劇性をお追いながら、これまでの英雄たちのように非人間的な存在ではなく「どうしてこうなるんだろう」という現代人のような苦しみとやるせなさを背負う存在。とにかく魅力的だ。井辻朱美の簡素さと雅やかさのバランスが取れた絶妙な訳文も素晴らしい。今はもう名文を読もうと思えば現代小説ではなく訳文を求めなければいけない時代なのかもと思える。2013/03/02
スターライト
7
「魂の盗人」「闇の三王」「忘れられた夢の隊商」および表題の長篇を収録。<永遠の戦士エルリック>シリーズとしてはあと3巻あるようだが、エルリックを主人公とする物語はここで終わるようだ。宿敵セレブ・カーナとの決着もつき、表題作では<法>と<混沌>との争いが、エルリックとジャグリーン・ラーンをその操り人形として展開され、大団円を迎える。まさにこうでなければならない、という締めくくり方で終わっていて新世界の誕生を思わせるエンディングは、ムアコックが紡いだ黙示録であり創世記なのかも知れない。2012/06/16