内容説明
遙かな未来、人類は地球から遠く離れた惑星にインド神話さながらの世界を築いていた。地上の民衆は無知なまま原始的生活を送り、“天上都市”の不死となった“第一世代植民者”は科学技術を独占し、神として民衆を支配している。だが、シッダルタ、仏陀、サムなどの名で知られる男が、圧制下にある民衆を解放すべく、敢然として神々に戦いをいどんだ…たぐいまれな想像力で、SFと神話世界をみごとに融合した未来叙事詩。ヒューゴー賞受賞。
著者等紹介
深町真理子[フカマチマリコ]
1951年都立忍岡高校卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
30
「面白いのに時間が経ったら絶版になってしまった本」について読友さんとコメントを交わしていた時に知った作家さん。転生技術を一部のエリート層が使えるのに対し、残りの人民の転生とそれを可能・発展させうる科学技術を制限することでカースト制を確立した未来。個人的に大好きな『トリニティ・ブラッド』のように魔術的とも言われる超科学技術の原理が出てくるたびにドキドキしました。科学者のサムことシッダールタが誘惑する悪魔、マーラ的立ち位置だったヤマと体制を打ち壊すために共闘を組む場面が熱かったです。2015/01/25
syaori
21
地球外の惑星に入植した人類の物語。その第一世代がヒンドゥー教の神々の姿を模して支配している世界です。主人公サム(仏陀)は、そんなシステムに疑問を呈し神々に対抗しようとしている人物。いきおい物語は神々の戦いという神話的な色調を帯びてきますが、その世界は高度な科学技術に支えられているのです。作者はSFと神話の融合を目指したようですが、ドームに覆われた〈天上都市〉で行われる結婚式での神々の饗宴は雄大で色鮮やかで、作者の目指した世界が見えるような印象深い場面でした。自分の好みとは少し違ったのですが楽しかったです。2016/06/20
いおむ
12
既読済みです。一時期ゼラズニィ嵌まりました。2019/02/28
鐵太郎
9
オープニングから、仏教用語というより、インド宗教用語のオンパレードですね。サム、と呼ばれる男の復活から始まります。これは、彼が世界を再び救おうとする物語であり、同時に遙かな未来、新しい世界に植民した人類の、原住民との軋轢、不当なカースト制への戦い、新世界の創造などを描いたスケールの大きい作品です。同時にこれは、めくるめく言葉の世界の中で行われるアクション快作でもあります。SFがSFであったときに書かれた、楽しい物語ですね。20年後にまた読みたい。2006/07/16
Ken05
7
哲学的命題を含んだ難解な物語かと思い込んでいたが、しっかりSFしっかりファンタジー。伝奇的ですらあった。確と哲学的命題も含んでいたが難解ではなく、むしろ知的好奇心をくすぐりつつ「思考する」機会を与えるような用い方。どうやら神々とSFは相性がいい。言葉のギミックも、神話も教典も。羅刹や夜叉の名を冠せられた者たちが先住民というのはすごい。転生という概念とテクノロジーによる再生もしかり。試しに冠せられた名前を取り去って眺めると、そこにはいかにもSF然とした、また違う世界が浮かび上がってくる。2010/11/14