内容説明
犬人間のタクシー運転手が殺された。しかも、口から大量の花を生やした奇妙な状況で。捜査にあたる女刑事シビルは、テレパシーで被害者の最期の意識にアクセスしそこで読み取ったボーダという少女の行方を追いはじめる。だが、それはのちに街を騒がせる「花粉侵入」事件の、ほんの序章でしかなかった―混血種やロボットが闊歩する未来世界を舞台に、英SF界の寵児が特異な感覚で描いた傑作サイケデリック・ノヴェル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KANEO
11
それは夢の世界からの侵攻か? 人×屍体、人×犬、人×ロボット等の異常な異種交配が当たり前の世界。あらゆる場所で咲き乱れる艶やかな花々と多量の花粉が飛散する光景。あまり健康的とは思えないトリップテクノロジー等々、それらの設定がサイケデリックで猥雑な世界観を構築している。独特でドギツく、想像力が及ばないところがあり難儀した。人を選びそうな作品である。設定を受け継いだとされる前作を読んでいない為でもあったのだろうけどボクはちょっと苦手だった。「花とは植物の露出した生殖器である」解説にあるこの一文が実に印象深い。2015/02/05
眠る山猫屋
9
エッジの利いたSFでした。まずヴァートの概念が凄い。トリップするというよりは、ヴァーチャルな世界へ移行する為の、羽のようなもの。物語はその向こう側からの干渉を描いていますが、さらに前提としての不妊症治療薬“豊穣薬十号”の薬禍がもたらした異種交配の進んだ世界観があり、まるで映画版ブレードランナーのような混沌があります。世界を救うより喪われた家族や愛を追いかける物語は、生と死を超越して百花繚乱の世界を改変しながら進みます。確かにサイケだ!クラクラくる物語でした。2015/12/26
koutaquarter
5
精神感応能力者が暮らし、人・犬・ロボット・死体(!!?)の異種交配が進んだ近未来世界サイバーパンク。人工知能搭載の自動車なんかも出てくるが、脳内チップのような一般的な(?)ガジェットが『羽』に置き換えられているのが特徴的。人々は専用の『羽』を口にくわえることで通信をしたりドラッグの替わりにしたり疑似世界に遊んだりする。故にか、どちらかというとスピリチュアル方面の要素が強い印象だった。SFにおいては『人工物の反乱』というのはわりとよくあるテーマなのだけれど、この小説もその変奏で、しかし前述のように設定が独特2012/03/13
The-Q
4
サイバーパンクとサスペンスとワイドスクリーンバロックの展望をごちゃ混ぜにして4で割った感じ。カオス状態のマンチェスターの雰囲気やコヨーテ殺しから始まるサスペンスものとして楽しむ。設定やら状況はだいぶ派手なのに物語自体はいまいち地味なんだよなぁ、なんでだろう2013/03/12
しんかい32
2
夢の世界の住人たちが現実世界に花粉をおくりこみ、花粉症患者のクシャミの力によって夢と現実の境界を打ち砕こうとする、という設定は非常にバカバカしくてよいが、話は前作『ヴァート』より退屈。きっとあれだな、主人公がダメ人間でないからだな。2010/02/24