内容説明
女は城壁の中の「女の国」で政治をつかさどり、男は外の「戦士の国」で軍隊を組織する―“大変動”の後の荒廃した世界で、人々は男女に分かれた社会を作り、微妙なバランスを保って生きのびていた。「女の国」に暮らす少女スタヴィア。ひとりの少年戦士と恋に落ちた彼女が数奇なる恋路のはてに見出した、この国の驚くべき秘密とは。気鋭の女性作家テッパーが、未来社会に生きる多感な少女の成長を情緒豊かに描く話題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
GaGa
40
前半は多少だらだらとするも、後半のたたみかけは良かった。ジェンダーうんぬんではなく、物語としての面白さはある。ただデストピアものとは容易に片づけられないのは、このような風習や考えなどを持って理不尽な形で日々生きている女性も世界にはいるのだろう(本作ではそうすることで秩序や安定を保つ形となってはいるが)この作者、他作品はあまり訳されていないようで残念。2012/07/25
駒場
5
女の国は政治を司り、戦士の国は軍事を司り女の国を守る。ディストピアものと言えなくもないが、女の国の外にある荒廃した地域では女たちが家畜同然の『子産み女』の如き扱いを受けているという、現代にも通ずる状況が在り……。女を所有することが「名誉」として正当化される男根主義を、気が遠くなるほどの時間をかけて駆逐しようという女たちの静かな抵抗の物語に圧倒される。冗長な部分がないとは言わないが、ジェンダーSFの代表作として長く読まれて言って欲しい。『MAD MAX』ってこの作品リスペクトしてたりするのかな?2016/11/20
おのうち みん
4
何度目かの再読。これを超える衝撃の本はなかなかない。ディストピアなんだけど、今とどっちがマシか? と考えると、作中のがマシなんじゃいかと、思うことが結構あるから、いよいよ困る。女にとってだけでなく男にとっても。男として生きることが、男女で協力して生きることより大事なら、男として死に場所を与えてあげた方が、しあわせなんでないの、とか思ってしまうのだよ。そうでない人は女の国へ帰ってきてくればよいのだし。2011/09/16
やぎとら
3
女は『女の国』で政治や工業・農業などを行い、男は『戦士の国』で『女の国』の護衛をする世界。なぜ女が男を支配するのか?と不思議に思った男たちは、少女たちを誘惑してスパイにしようとたくらむ。 主人公の女性の視点が、息子を『戦士の国』に送った後と自分が子どもだったころの二つの時間を行き来するためなのか、非常に読みにくかった。登場人物は多いし、ネタバレするまで引っ張るし、劇中劇や夢の世界の隠喩を多用するし、内容どうこうより構成を理解するのでいっぱいいっぱいだった。 結末と似たようなことは、もう始まってるよなぁ。2015/04/27
更紗姫
3
恐ろしい物語だが、思考実験たるSF作品として、成功しているのではないか?ニュースでは相変わらずDVやレイプや幼児虐待の話題が扱われ、加害者はほぼ男性。インドや中東の男尊女卑が改まる気配もない・・・。この作品では、世代交代を経て、男性の暴力傾向を希釈しようと取り組む。気の長い話だ。男女共に、気の毒でならないが、現代も根っこの問題は解決されていない。2013/11/03




