内容説明
烈風が吹きすさぶ荒れ果てた砂漠を、スネークはさまよっていた。彼女の職業は〈治療師〉。蛇の毒素から抗体をつくって、病人を癒す者。だが今のスネークには、その資格はなかった。治療のために必要な三匹の蛇のうち、スネーク自身がつくりあげた“夢の蛇”が殺されてしまったのだ。かくしてスネークは、新たなる夢の蛇を手に入れるべく、核戦争の爪跡も消えやらぬ荒野に旅立つが、その行手には何者かの邪悪な影がちらつき、旅を妨害するのだった!ル・グィン、ティプトリーと並び称される閨秀作家が流麗なタッチで描き、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞に輝いた傑作SF。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アプネア
5
サイエンス少なめのファンタジーなのかな?舞台は核戦争後の荒廃した世界、治療師・スネーク(女性)はいつも3匹の蛇を帯同していた。ガラガラ蛇の<砂>、コブラの<霧>、夢の蛇の<草>。3匹そろって毒素から抗体を作り出し治療を行うのだが希少種・夢の蛇を失い、代わりを求めて旅を始めます。プロットとしてはいたってシンプルだが、脇を固める登場人物たちはキャラが立っていて、それぞれに背景がある。主人公の損得勘定を超えた利他的な行為は格好良く、自立した女性として、フェミニズムの影響が全般的に色濃く反映されている。2017/05/06
まさし
1
力強く、美しい物語でした。今まで自分が読んできたSFとは異なり、ファンタジー的な味わいを感じる一冊。さすがはダブル・クラウンという感じの読み応え。2022/08/25
いると
1
実は再読。以前借りて読んだのだが、どうしても又読みたくなって古本で購入。戦争で文明が一度滅んだ地球で、一部の高度な文明を維持し宇宙人と技術的な交流のある閉ざされたシティを取り巻く退化した文明の世界。その世界の中で蛇を使って人々の病を治すスネークという治療師が、とあることで治療に必要な希少な蛇を失いそれを再び手に入れるまでの話。その間出会う親切な人、エゴに囚われた人新しい世界を目指す人、それらにまつわるエピソード、どんな苦難にも決して挫けることのないスネークの強さがとても好きだ。2014/03/27
tsuneki526
0
90年代に読了。受賞作品だけあってユニークで破たんのない物語。
東森久利斗
0
荒涼な環境、無政府状態、弱肉強食、ミュータント的な特殊能力、いまや常識となりつつある核戦争後のステレオタイプな世界が舞台ではあるが、単なる舞台としてしか存在せず、人間、男と女、種族、生物との繋がり、交流が物語の柱となっており、マッドマックス的な殺伐感がないため、タイトルにある“夢”のような雰囲気を醸し出している。2016/03/18
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