- ホーム
- > 和書
- > 新書・選書
- > ノベルス
- > ハヤカワポケットミステリー
出版社内容情報
1936年、ロンドン。高名な心理学者リーズ博士が、自宅の書斎で何者かに殺されているのが発見された。現場は密室状態。凶器も見つからず、死の直前に博士を訪れた謎の男の正体もわからなかった。この不可能犯罪に、元奇術師の探偵ジョセフ・スペクターが挑む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
151
元奇術師の探偵が活躍するミステリには、ふさわしい不可能犯罪と意外な犯人が求められる。英国に亡命したフロイトがモデルの心理学者が脱出不能の密室で殺された事件で、探偵だけでなく家族や患者や関係者などエキセントリックで疑わしいキャラばかりとの設定が効いている。二重三重の人間錯誤を利用したトリックや、過去の因縁が動機となるなど怪奇趣味こそないがカー作品へのオマージュが明らかで、戦前のロンドンを舞台に読者への挑戦を挟むなど当時の名探偵と競うような稚気が嬉しい。シンプルな展開と相まって本格ファンにはたまらない贈り物。2023/05/27
yukaring
90
カーを彷彿させる密室からの人間消失の謎。高名な心理学者リーズ博士が鍵のかかった書斎で殺される。不可能犯罪に挑戦するのは元奇術師の探偵スペクター。「不可能犯罪と奇術は紙一重だ」と語る彼はじわじわと容疑者達の秘密へと迫っていくが第2の密室事件が起こり・・。博士の患者や身内たちの怪しい動きに翻弄されなかなか決め手が見つからない。解決編が袋とじになった仕様で開ける前に考えてみたが全く歯が立たず。トリックはシンプルだが緻密なロジックで積み上げられる謎解きがとても楽しく、黄金期の本格ミステリを読むようで大満足だった。2023/05/26
★Masako★
61
★★★✮☆ 心理学者のリーズ博士が自宅の書斎で殺された。現場は完全な密室。元奇術師の探偵・スペクターは、警部補・フリントと共に真相を追う。リーズ博士の娘や患者たち含め、みな秘密を抱えているようで誰もが怪しい。そして再び密室殺人が…。舞台は1936年のロンドンということで、その頃の雰囲気がよく出ていて、昔読んだカーやクイーン等を思い出させる。解決編は袋とじ(図書館本なので開封されていたが)になっており、わくわくさせる。真相には驚いたし(第二の密室のトリックはスッキリしなかったが)、読みやすく結構楽しめた♪2024/06/19
オーウェン
58
ミステリの古典のような香りが残る作品。 リーズ博士が自宅で殺されたが、その部屋は完全なる密室。 犯人はどこに消えたのか、更には凶器も見当たらない。 警察から依頼を受け奇術師で探偵でもあるジョセフ・スペクターは現場の検証に取り掛かる。 過去のミステリ作品に言及したり、フェル博士の密室講義を放りこんできたりする。 かと思えば読者への挑戦状もあるし、解決編は袋とじというやり方。 そこまで凝ったトリックではないが、徹底してミステリのクラシックのようなつくりは悪くない。2023/06/27
本木英朗
39
英国の現代本格ミステリ作家のひとりである、トム・ミードのデビュー作である。1936年、ロンドン。高名な心理学者アンセルム・リーズ博士が自宅の書斎で殺された。現場は完全な密室状況。この不可解な事件の捜査を依頼された元奇術師の私立探偵ジョセフ・スペクターは、容疑者である博士の患者たちに翻弄されながら、彼が隠していた秘密へと近づいていく……という話である。わずか250ページ弱の長編であるが、まったく分からなかったよ、俺はね。とにかく名探偵の名推理を読むしかないってば! 大満足でした。2023/07/31