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出版社内容情報
漁業会社売却の噂に揺れる半島の町ロイヤルティ・アイランド。そんななか、十四歳の少年カルは父がある犯罪に関わったのではと疑いはじめる。荒々しい海を背景に苦い青春を描く新鋭のデビュー作
内容説明
アメリカ北西部の海辺の町ロイヤルティ・アイランドでは、男たちは秋から半年ものあいだ厳寒のアラスカで漁に励み、妻たちは孤独に耐えながら夫の帰宅を待つ。十四歳の少年カルは、いつか父とともにアラスカに行くことを夢見ていた。しかしある日、漁船団のオーナーが急死し、町の平穏は崩れ去る。跡継ぎのリチャードが事業を外国に売りはらうと宣言し、住人との対立を深めたのだ。その騒動のなかでカルは、大人たちが町を守るために手を染めたある犯罪の存在に気づく。青春の光と影を描き切った鮮烈なデビュー作。
著者等紹介
ダイベック,ニック[ダイベック,ニック][Dybek,Nick]
ミシガン大学卒業後、アイオワ・ライターズ・ワークショップで創作を学ぶ。2012年に発表した『フリント船長がまだいい人だったころ』は、グランタ誌をはじめとする有名紙誌に絶賛された。ニューヨーク在住
田中文[タナカフミ]
東北大学卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
113
作者と読者の心理戦。アラスカへの遠洋漁業に暮らしの全てを依存する太平洋岸の町。町を牛耳ることになるのは、船の所有者か、漁業権の所有者か、漁の術を心得た者か。父達がいない町では、少年たちは追い詰められる。そして…そういくのか…。残念な点は、母の行動がよくわからなかったのと、何より「宝島」の入れ込み方が中途半端なこと。ペン・ガンまで出すマニアックさのわりに、後半からはかすりもしないじゃないか。宝島の主役のジョン・シルヴァーが出てこないし。昔の名作にあやかるなら、しっかりあやからなくては行けないと思う2021/08/01
星落秋風五丈原
44
「欲深いというのは、たったひとつのものをほしがるのとはちがう。何もかもほしがることだ。何がほしいのか自分でもわからないことだ。ひとつのものをほしがるのは問題ない。そういうのは欲深いとはいわないんだ。」ただ、カルはこの続きを覚えていない。それ自体は不思議でも何でもない。親との会話の全てを覚えていられるわけがないからだ。それでは、なぜカルはこの続きを聞きたがっていたのか。ひとつのものを欲しがることを何というのかを知る事が、彼の救いになるからだ。では、なぜカルは救いを求めるのか。段々ミステリーになってきた。2018/07/10
藤月はな(灯れ松明の火)
41
漁を中心とした生活を送る村で皆から尊敬されていた船長であるジョンが死んだ。だが、ジョンの息子であるリチャードが漁行権を全て外国に売り渡すことを決定してから穏やかな暮らしにある疑惑と影が差すようになり・・・・。ただ、これまでも続けていくと思っていた生活を守りたかった大人が行ったことを諦めたように受け止めるリチャードが印象的。子供が大人になってからやっと理解する、そうせざるを得ないまでに追い詰められた大人と裏切った友の苦悩と自分の正義だと思っていたことの傲慢さが過去の回顧から炙り出されていくビターな作品。2013/09/12
miyu
37
何故そこで些細な言葉さえ伝えられないのか。そのせいでどんどん違った方向に進まざるを得なくなるのに。大切なものを守るために人は思いもよらぬことをする。カルもカルの父親もリチャードも。ジョンが息子のリチャードを船に乗せない決心をしたのもきっと彼への愛情からだ。いやむしろ自分の叶えられなかった夢の為なのか。そこに憎しみなどないのに結局誰ひとり何も守りきれることができない。リチャードは故郷と命をなくしカルと父親は互いを見失った。リチャードがカルに囁く「君と僕は似ている」その言葉の重みをかみしめた。とてもよかった。2016/08/14
アーチャー
22
信じていた事柄にも善悪があり、それまで善だと信じていたことが実は悪であり、主人公もいつの間にか悪に染まってしまった過程が切なく綴られ、ほろ苦い読後感も味わってしまいます。ミステリーというよりも、青春小説として読める面白い作品だと思います。2013/01/16