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内容説明
遺産は1944年にイタリア戦線で従軍中に行方不明となった一人息子のアレグザンダーへ―大富豪ヒュービイ家の未亡人が残した風変わりな遺書に、彼女の埋葬に立ち合っていた親威一同は、胸のうちに秘めた驚きと悔しさを隠しきれなかった。と、そのとき、もっと驚くことが起こった。とつぜん一人の男が現われ、墓穴のそばにひざまずくと、「ママ!」と叫んだのだ。これにショックを受けたのは、家族の者だけではなかった。アレグザンダーが90歳の誕生日までに戻ってこなければ遺産の3分の1ずつもらえるはずの三団体も、事の成り行きを固唾を飲んで見守っていた。はたして男は本物のアレグザンダーなのか?ヒュービイ家の弁護士から個人的に相談を受けたダルジール警視だったが、調査を開始する間もなく、事態は殺人事件へと発展した。新本格派の旗手ヒルが、鋭い人間観察、皮肉とウイットに富んだ文体で遺産相続をめぐる争いを描く本格大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
81
老婦人の奇妙な遺書には出征した息子の生存を信じる一念が込められており、その葬儀に行方知れずだった男が遺産相続人として現れる。こんなフォークロア的筋書きが犬神家の一族を思わせるけれど、後の展開はまるで違った。遺産に群がる人々、警察やマスコミの内幕、ゲイ差別、人種差別…と、どれが本筋か判らぬまま第二の殺しが起きる。話は膨らむ一方だが、劇や詩からの豊富な引用と鋭い人間観察が飽きさせない。親から子、子から親を見る目の辛辣さは清々しくさえあって、読むうちに《子供は大人の父である》というワーズワースの詩が身にしみた。2019/01/18
Ribes triste
15
莫大な遺産の相続騒動、白人至上主義者によるケンブル劇場の破壊行動と俳優襲撃、新警察長任命の行方、様々な事件が折り重なる中で、ウィールドは同僚達に、自らゲイであることを告白しなければならない状況に追い詰められる。「そんなのとっくに知ってた」とのたまうダルジールとエリーと、「気付かずにいてごめん」と落ち込むパスコー。先の先までお見通しのダルジールの懐の大きさもさることながら、最後まで捜査しないと気が済まないパスコーのしつこさにも脱帽する。2019/11/07
bapaksejahtera
7
かなり長くかつ入り組んだ筋。ダルジール警視の奇矯しかし痛快な台詞と活躍を楽しむだけでは済まない。田舎の名家の相続問題が一つのテーマだが、英国の相続法や親姻戚間の社会的意識が今ひとつ理解できないまま読み進む。自由のための戦争に、我が国とは逆に勝利した帝国の戦後植民地解放への葛藤、同性愛の社会的認知。難しいテーマが実はてんこ盛りなのだ。エピローグで語られるパスコー警部による謎解きはやや拵え物の感を強くしたが、まずは楽しめる一作であったことは間違いない。2020/10/05
ゆーかり
2
パスコーはやたら大学出を強調され(ここの警察に他に大卒はいないのかという程)、その上ハンサムという人なのだけど、今回はパッとしませんでしたね。それに対してウィ-ルドはなぜ?と思う程に醜い醜いとばかり描かれていているが、今回はちょっと中心人物。それ迄隠してきたのに同性愛者だという事がばれてしまうし。クリフは可哀想でした。人種の問題とか、親子関係とか、そういう事が絡んでるなーって思いながら読んで、最後にすべてが繋がりました。レキシーには驚かされましたね。ずっと積読本だった割に読んだら面白かった。2005/11/19
ちの
1
最後はびっくりしました。そうだったのですね!というか何というか‥ しばらくしたら再読してみたいです。2019/09/23