出版社内容情報
伝統か革新か。
国家の正統性を示す歴史書である「正史」のひとつ、『三国志』。中国を約400年間支配しつづけた帝国・漢が滅び、群雄割拠の乱世が訪れたとき、英雄たちはどのように生きたのか?「漢」の伝統に寄り添った蜀の劉備と、革新の発想を持った魏の曹操、呉の孫権らのせめぎ合いを、史実に即して描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れみ
74
別冊NHK「100分de名著」集中講義「三国志」。地名や人名が難しくて大変なところもあったけど、人物や国ごとに分けて分かりやすく書かれていたし、「三国志」と「三国志演義」の比較も興味深くて、あまり詳しくない私でも面白く読めた。諸葛亮がスーパースター的に描かれがちなのって、書かれた経緯(劉備との緊張感とか)はともかくとしても「出師表」が素晴らしいからなのかな、と感じた。2019/08/24
スミノフ
21
「演義」と「正史」の違いなどが丁寧に解説されています。「演義」をベースにした小説・漫画を読むと、どうしても劉備に肩入れしたくなります。しかし本書を読んで、曹操や魏の先進性に瞠目しました。三国志に対する先入観が解きほぐしてくれると同時に、いっそう三国志の味わいが深くなりました。2020/12/01
フク
21
〈隆中対(草廬対ともいう)は、よく「天下三分の計」と言われますが、三分は手段であり目的ではありません。魯肅のそれがあくまで天下三分を目的とすることに対して、諸葛亮はあくまでも漢による中国統一を目指したのです。〉孫権も天下統一を目指していたと見て非合理な選択をしているように感じたが、鼎立状態の維持という目線で見ると納得出来る。2019/10/04
楽
17
2017年の番組テキストをもとに大幅加筆・再構成■小説ではなかなか描かれない経済や社会にも言及■詳しくは著者の中公新書『三国志』を読めばいいのだろうが、特に前半は納得のいかない部分が多い。魏や呉は革新で蜀は伝統を固守? そんなに簡単に二元論的に説明できないのでは。説明不足なのか文章がツギハギなのかすっきり頭に入ってこない。董卓軍は弱かったのか強かったのか■関羽と塩商人の関わり、清代の一層の神格化などの深掘りは興味深い■魯粛の天下三分の計の革新性■関羽と諸葛亮、劉備と諸葛亮の緊張関係はもう少し注目されてよい2021/12/21
かふ
15
正史『三国志』と物語『三国志演義』の違い。実際の劉備はひどいリーダーだった?妻と子供をおいて逃げたり、しんがりを張飛に任せたり。それでいて天才とされる軍師諸葛亮を三顧の礼で迎い入れ関羽や張飛は冷遇された。儒教的な『三国志演義』は義理人情に厚い関羽こそが主役となるべき、のちに神様として祀られる。横浜中華街にある関帝廟はなぜ関羽なのかと思ったら一番人気のキャラだった。諸葛亮も軍人としては負け戦ばかりで退却の仕方が良かったとか。2019/08/15