出版社内容情報
大人になるのって、こんなにも難しい!
テムズ川河口域の村に暮らす少年ピップは、美しい少女エステラと出会い、やがて莫大な財産の受取人に選ばれ、ジェントルマンとなるべくロンドンへと向かう――。19世紀イギリスを代表する作家ディケンズの『大いなる遺産』は、主人公の成長と立身出世を描く「教養小説(ビルドゥングスロマン)」の名作として長く親しまれてきた。だが、他の教養小説と比較して、ピップの成長にはどこか回りくどさや奇妙さがつきまとう。
ピップの成功と挫折から見えてくるのは、当時のイギリスで浮上していた階級社会や実力主義社会、そしてジェンダーの問題だ。彼の歩みを読み解きながら、真の成長とは何か、社会の中で生きるとはどういうことかを考える。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
51
貧しいヒップの成長過程には、ミス・ハビシャムと出会い何不自由なくわがまま放題に育てられたエステラに翻弄されるというとんでもないトラップが仕掛けられている。彼女たちによって、ヒップは強い差別意識を植え付けられてしまうのだ。だが、ヒップの周囲には何人もの善意の人がいる。ヒップの目がなかなか彼らの方に向かないのがもどかしくてしかたないのだが、それこそがディケンズのストーリー構成の妙でもある。第3回のジェンダーの問題については、ちょっと深読みしすぎているような気がしないでもなかった。2026/06/12
海燕
31
ディケンズは翻訳でクリスマスキャロルと、大学時に原書で「Sketches by Boz」を講読した。教養小説という区分を昔は意識していなかったが、学生時代に読んだヘッセの「車輪の下」「デミアン」などは、ドイツのビルドゥングスロマンの代表作なのだった。主人公の体験を通して語られるから、読みやすく感じたのかもしれない。「大いなる遺産」は今回、興味を惹かれたから次に読みたい。19世紀中頃に書かれた、労働者階級の立身出世を題材にした物語である。時代背景の違いなどを知らないと面白くないが、本書で予習ができる。2026/05/24
GELC
10
単なる立身出世物語に留まらない多層的な読みができる、深い作品だと分かった。しかし、解説者のフェミニズムやケアの理論に寄せる論調に、数か月前のドラキュラの時に感じた、「ちょっと無理読みでは?」という違和感がよみがえってきて、参考文献を見ると、その時の解説者の方の著作があり、なるほどと思った。主人公が多様な価値観を学び単なる階級上昇を是としない人間に成長したこと、打算的な行動が成功に繋がるとも限らないことなど、番組でもっと掘り下げて学ばせていただきたい。2026/05/02
funuu
8
ディケンズの作品に排除がなお残っていることには留意が必要でしょう。一つは植民地の問題です。物語の最後、ピップは中東で実業家になります。それは見方によっては、潜在的な植民地を取り込んで(搾取して)社会を広げるということである可能性があります。「ウィッティントンと猫」もアフリカでの通商の話でしたから、広い意味で帝国主義的な側面がある話であること は否めません。 ← アメリカへ渡った白人はヨーロッパでは当時は下層階級の人々なのが理解できる。暴力と慈愛の世界。 トランプ大統領を産むのがアメリカなのが理解できる。2026/07/05
カロン
4
まずは、クリスマスキャロルが有名な作者さんだと入り、読み進めていくうちに、まだ私にはこの本は早そうと思った。とりあえず読了はしたけれどもモヤモヤする感じ。また数年後に読んでみて、するする読み進められるなら原著にもトライしようかと思います。
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