出版社内容情報
吸血鬼は「悪」なのか?
映画、漫画、アニメなど多数の二次創作を通じて、「吸血鬼もの」の原点として世界中で知られている小説『ドラキュラ』。ゴシックの怪奇小説として受容されているが、実は19世紀末の人々が直面していた社会問題や文化現象を、作者ブラム・ストーカーが批評的に見つめることで創り上げた作品だった。進化論の隆盛の一方での「退化」への恐怖が、さまざまな面で規範から外れてしまうマイノリティの存在を排除・疎外する――。そんな社会の風潮に、スリルたっぷりのエンタメ作品という形をとりつつ問いを投げかけた本書は、差別や分断の進むいまこそ読むべき一冊。「ケア」という現代的な視点を援用しながら、作者の意図を丁寧にほどいていく。
【目次】