出版社内容情報
誰もが共有できる価値を見つけ出す哲学、それが現象学だ!
本書が著されたのは20世紀前半のヨーロッパ。あらゆる学問が発展を遂げ、人類は世界をより深く、より正しく理解できるようになった。にもかかわらず、哲学者フッサールはそこに「諸学の危機」を見て取る。客観的な真理や発見を追い求めるあまり、原点である「どう生きればよいのか」「何がよいことなのか」が置き去りにされてしまったからだ。私たち人間という存在に深く関わるこれらの問いに、学問が再び向き合うことができるよう、フッサールは「現象学」を提唱した。
生きる意味や価値を共に探り、分かち合うことで、よりよい社会のあり方も見えてくる。現象学のエッセンス、そして今すぐ実践できる、現象学を用いた哲学対話の手法を学ぶ。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
20
本質観取(変換すると本質看守になる。世界はこの方向性なんだと思う)はプラトンの「イデア論」なのでは。ベンヤミンによるとそういう本質(アウラ)は失われてしまったのではないのか?キリスト教社会とイスラム教社会の対話が必要だというのは理想論のように思う。ただどこまでも懐疑論になるとシオランの絶望しかないのだろう。どこか信じるものがあるとすれば超越論なのだろうか?感情論(叙情性)と実証主義(論理性)の対立は文学的な問いでもあるので、もう少し見ていきたい。2025/08/03
nbhd
15
まず、タイトルが超絶エモいよね。ヨーロッパ諸学の危機」!、そして「超越論的現象学」!!なんだもん。学生時代に哲学にかぶれた頃は、正直よくわからなかったけど、社会人を20年くらいやってきて、コンサル的資本主義にまみれる日々のなかで読んでみて、フッサールさんの気持ち、すーげぇーわかった(感応した)。フッサールは数学者出身で、ヒルベルトプログラムとかその時代の人。で、危機書の「ヨーロッパ諸学の危機」の部分は、フッサールによる科学史(数学・物理)なのだと知り、俄然、興味が増した。結局、主観なんだよね。わかるぅ。2025/08/03
GELC
11
『純粋理性批判』の解説で感銘を受けた西先生の解説ということもあり、ここ最近のテーマ本の中では最も期待している。「正しさはひとそれぞれ」「みんな違ってみんないい」の思考停止に陥らず、対話を通じた共通認識を図るための考え方をしっかり学びたい。2025/07/02
ラウリスタ~
10
科学の進歩により世界を客観的な数字で把握できるようになるにつれ、主観的なものは価値を失っていく、それの危機に警鐘を鳴らす。主観的なものを人それぞれだよねと片付けると、共通する価値判断ができず、相対主義に陥ってしまう。現象学での「本質観取」とは、「なつかしさ」といった経験を各自が語り合う中で、共通する要素を導き出す実践。自らの客観性を標榜するマルクス主義の後の、それに対抗する相対主義。しかしこのポストモダンの隘路をさらに乗り越えるために今必要とされるのが、共有できる認識や価値を作るためのフッサール現象学だと2025/08/18
かずりん
7
100分de~は哲学解説に限る。最も難解のひとつとされるフッサールの現象学。これまでカント、ニーチェ、ヘーゲルそして今回と、西研氏による分かりやすい解説には定評があり楽しみである。2025/07/13
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- 和書
- 台湾鉄路千公里 角川文庫