出版社内容情報
ムラカミはなぜ世界を魅了するのか?
飼い猫の失踪をきっかけに、どこにでもある日常を生きる「僕」の毎日が一変する。「壁抜け」による時空の超越、凄惨な歴史の記憶、日常に潜む闇、解かれることのない謎――。作者自身が「意欲的な小説」と振り返る本作は、村上春樹を「世界文学」のステージへと押し上げた傑作と名高い。特異かつ難解なことで知られる物語世界に分け入り、卓抜な文学表現を味わいながら、「閉じない小説」の深層へと迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベイマックス
58
学者でもないので、普段は文芸評論的な本は読まない。でも、村上春樹作品ということと、「100分de名著」ということで読んでみました。早く村上氏の新作が読みたい。2025/04/03
ぐうぐう
30
番組を観終わってから、補足の目的でテキストを読む。番組では解説の沼野充義の論理的で、でも優しい語り口が心地よく、司会の伊集院光の考察にも丁寧に頷いていたのが印象的だった。このテキストの文体もまた、番組同様優しく丁寧な語りとなっている。番組でもそうだったように、沼野は世界文学としての村上春樹という視点で解説しており、それがこのテキストではより強く感じられる。コラムの中で『ねじまき鳥クロニクル』の英訳版が刊行される時、契約上の問題で一部をカットした短縮版として刊行されたのだが、(つづく)2025/05/02
もえ
28
『ねじまき鳥クロニクル』は未読だが、放送を視聴しながらのテキストとして読了。『ねじまき鳥クロニクル』は『海辺のカフカ』の8年前に書かれたもので、村上文学の転機となった作品であることは間違いない。ロシア東欧文学研究者の沼野充義さんの解説がとてもわかりやすく、例えば、村上春樹が若い頃からロシア文学を愛読していて、ドストエフスキーの『罪と罰』などの作品にも影響を受けているということは初めて知った。今、世界中で「ねじまき鳥」が鳴いている現実と向き合うためにも、あらためて『ねじまき鳥クロニクル』を読んでみたい。2025/05/07
tom
22
第一回の沼野センセの語りを聞き、ねじまきを読み直す。再読だから、ところどころに既視感があるけれど、けっこう新鮮な気分で読む。そのうえでこの本を入手した。ねじまきを深読みしていくとこんな感じになるのかと思う。佐藤優もねじまきについて書いているけれど、私には沼野センセに一票という感じ。ただし、私は沼野センセや佐藤優のようには読まない。二人は、結局のところ村上の政治的指向性を現わした物語として読むのだけど、何か違うように思う。私は、上質のファンタジーとして読んで楽しむ。政治的指向性ナンチャッテという気分。2025/05/22
たらお
22
春樹好きだった学生の頃でも読むのにかなり苦労したのと、ノモンハンでの戦争の叙述がすごく長かった記憶が…。再読しようか考えていたときに、100分de名著で取りあげられたので、こちらから読んでみる。テレビとテキストはまた別物でどちらも楽しめる。ねじまき前「喪失」→ねじまき以後「関わろう・取り戻そう」とする意図が働いてきた転換的作品。妻が突然いなくなり、井戸におり、もう一度身の周りに起きたことを見つめ直す。悪と対峙し妻を取り戻す。ハッピーエンドとまではいかないかもしれないが、相手と関わる意図が十分に見られる。2025/04/17