出版社内容情報
希代のストーリーテラー
昭和を代表する女性作家、有吉佐和子。数々のベストセラーを世に送り出したものの、文壇の主流からは「大衆文学」ととらえられ、十分な評価を得られなかったが、没後40年を迎えた今、再び注目が集まっている。時代を超えて読み継がれる背景には、彼女の作品に通底するユーモアとリアリティ、俯瞰する視点があった。
江戸時代の医家で繰り広げられる嫁姑争いを描いた『華岡青洲の妻』、経済成長期のさなかに高齢化の問題をあぶり出した『恍惚の人』、日常を生きる人々の機微を鮮やかに映し出した『青い壺』を題材に、「家」「老い」「幸せ」といった現代に共通するテーマを穿つ、女性たちの辛辣で、しなやかな語りを味わう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙@読書会10周年
54
今回取り上げられている3冊と巻末の「もう一冊の名著」:女二人のニューギニアはすべて既読ですが自分の読みの浅さを思い知ることになりました。もちろんソコロワ教授は時代背景や関連文献まで読んでの解説ですから詳しいのは当たり前ですが視点の違いもあり、多いに気付きがありました。2025/01/24
れみ
44
NHK-Eテレ「100分de名著」2024年12月のテキスト。昭和に活躍した女性作家・有吉佐和子さんの「華岡青洲の妻」「恍惚の人」「青い壺」を解説。有吉さんのお名前はもちろん作品名も知ってはいたけど読んだことはなく、これをきっかけに3冊を読むことに(「青い壺」は読んでる途中)。番組ではソコロワ山下聖美さんの解説や原田ひ香さん・伊集院さんや阿部さんのお話が面白いうえ、堀内敬子さんの朗読がまた素晴らしくて、毎回楽しかった。2025/01/05
ぐうぐう
31
有吉佐和子を取り上げるにあたって、このラインナップには少し不満もあったのだが(『華岡青洲の妻』はわかるが、『青い壺』の代わりに『香華』であったり『和宮様御留』といった作品のほうが有吉の凄さを伝えられるのではないかと思ったからだ)、番組を観て、と同時にこのテキストを読んで、納得に変わった。『恍惚の人』は現代の介護問題を先取りしているし、『青い壺』が再びベストセラーになっていることでもわかるように、現代人の琴線に触れるテーマで有吉作品の普遍性がラインナップからは理解できる。(つづく)2025/01/08
もえ
25
有吉佐和子の『華岡青洲の妻』と『恍惚の人』と『青い壺』を、日大教授のソコロワ山下聖美さんの解説で放送された。このうち『華岡青洲の妻』は亡き母に勧められて学生の頃に読んだが、歳を重ねた今は嫁と姑の心情が痛いほどわかる気がする。『恍惚の人』は私の子供の頃には流行語にもなったと記憶しているが、認知症と介護の問題は現代にも通じていて今こそ読むべき本かもしれない。『青い壺』は原田ひ香さんの「こんな小説を書くのが私の夢です」という帯の言葉で新たに18万部も売れたそうだ。普通の幸福が描かれた連作短編集を読んでみたい。2025/01/09
あきあかね
17
「歴史に名を残さなかったとしても、自分の生きた証を残すべく一生懸命に生き抜いた女たちー。その姿は、墓の有無や大きさとは無関係に尊いのです。」 『華岡青洲の妻』の嫁と姑の相克、『恍惚の人』の壮絶な介護。センセーショナルな主題に隠れがちだが、有吉佐和子の作品は人間の尊厳を描き出す。『恍惚の人』について、認知症によってこれまでの自分を失っていく老人と翻弄される家族を描いた作品という印象を持っていたが、老いてもなお尊厳を失わない人間の姿に光を当てようと有吉佐和子は考えていたという。⇒2024/12/31