出版社内容情報
善良な個人が狂暴化するとき【2021年9月のアンコール放送】
人びとが無個性化した「群衆」と化す過程を辿り、その特性や功罪を考察した社会心理学の名著。なぜ群衆は合理性のない極論を受け入れるのか? 指導者やメディアはいかに群衆心理を煽動するのか? 気鋭のライターが政治のあり方からネット炎上までを俎上にあげ、現代にはびこる群衆心理の問題をあぶり出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
加納恭史
20
私はこの本で、群衆心理について、更に確信を深めた。ル・ボンの群衆心理を既に応用した人々についても語られる。直ぐに分かるのは調べて応用したのはまずナチスのヒットラー。実際に動いたのは宣伝相のゲッペルス。ということは、ハンナ・アーレンより早くル・ボンが全体主義のプロタガンダを知り、本書を表していることに驚く。横暴かつ単純、偏狭かつ従属的な、善良な人々が「群衆」と化す過程を考察し、その特性や功罪を徹底的に論じた社会心理学の精髄を表した。政治のあり方からネット炎上など現代に蔓延する群衆心理の問題点をあぶり出す。2023/03/16
イリエ
18
再放送されたので。自分で自分をどこまでコントロールできているのか、不安にさせる本。うーん。テレビ放送よりも武田砂鉄氏の意見が書かれてあるのですが、うなずける部分と、首を捻る部分があります。考えさせていただきました。2022/12/03
はるき
15
自分に置き換えて、改めて恐怖を感じました。フラットな思考をどこまで維持できるか。全く自信がありません…。2023/02/16
としP
11
多くの人は「白か黒か」のような単純な帰結を求めがちだけど、おそらく物事はもっと複雑なものだと思う。単純さに騙されない。そのためには「自分で考える」ことが大切。2023/02/27
kanaoka 58
5
社会心理学の嚆矢、ギュスターヴ・ル・ボン著の群集心理に関するNHK放送のテキスト本。自然発生的に起こる群衆の熱狂の本質と、その動向がどう推移するのか、どう消え去るのか考察に役立つ。さらに群衆を意識的に操る指導者と無意識で操られる群衆の怖さも分かる。例えば「空気を読む」というような日本独特の文化がどのように群集心理に反映されていくのか興味深い一方、グローバル化社会において群集心理が生み出す絶対性の持つ破壊力が、世界を混沌に陥れてしまうリスクについても考えさせられる。大変面白い内容で学ぶものが多くありました。2024/11/11