出版社内容情報
哲学史上最も重要なテーマとされてきた「存在」の問い方自体を刷新し、20世紀以降の哲学に決定的な影響を及ぼした本書。難解なことでも有名なこの書を、人間一人ひとりの本来的な生き方という視点から解読していく。また後世に残された「他者への責任」という課題についても考察する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れみ
53
NHK-Eテレ「100分de名著」のテキスト。ドイツの哲学者ハイデガーによる存在とは何かについてあらためて考えようという哲学書。存在とは何かということを、日常のなかでどう生き存在しているかを描き出し分析しようとするところとか、「みんな」の意見に同調する人は勿論抗おうとしている人こそ、それに飲みこまれているのだ…というところなど、腑に落ちるところも多いのに、なぜナチスに加担するようになってしまったんだろう。戦後もそれについて弁明することはなかったそうだけど、「自らの哲学的な理想の実現」はできたのかな。2022/04/30
ころこ
53
この番組には独特の文法があり、どの本にでも「堕落した世相に流されずに、本来の自分を発見し、それぞれの生き方を大切にしていこう」と読み込もうとするクセがあります。本に何が書いてあるのかよりも、読者にこのメッセージをどこに発見させるかという逆転現象が起こっているように感じます。この番組を嫌う人は、無自覚に押し付けられる言葉には読書の本来性が欠けていることに気付いてのことでしょう。『存在と時間』はそもそもそれぞれの生き方を大切にしていこうと読めるので、この番組には格好の餌食です。だからこそ発想を変えて、基本的な2022/03/31
yumiha
45
Eテレ『100分で名著』の第1回を見たら、ほとんど理解不能だった。読み上げられた原文そのものですら、翻訳のせいか(いやmy脳みそのせいだ💦)意味が取れない。肝心な用語ザイエント、ザイン、ダーザインも区別がつかない。それで本書を購入した。すると、何となく理解できたような気にさせられた(思い過ごし?)。それでTV放送の前後に予習したり復習したりしながら、4回を見終わる。そして結論。そんなに魅力は感じなかったので、ハイデガーの『存在と時間』は読まない。ややこしい哲学ちゅう鎧を纏っているけれど、要は私次第。2022/04/27
venturingbeyond
33
放送が終わってから、かなりの間積読していたテクストを引っ張り出して、隙間時間に1章ずつ片付けて読了。「100分」での要約(実質的には3回分=75分、1回分はアレントとヨナスのハイデガー批判)という厳しい制約の中で、晦渋な『存在と時間』を成立のコンテクストも含めて、平易に解説した入門篇(門前篇?)。ここから原著に進むと、その落差に愕然とするであろうが、最初から原著と格闘するなど、端から無理な話なので、このテクストを取っ掛かりに、さらに入門書・解説書をいくつか読んでから、原著に進むべきかと。2022/11/19
加納恭史
26
「存在と時間」に深入りする前に、分かりやすい解説書でまとめを読んでみる。まあ100分de名著が良いかな。著者戸谷洋志さんはハイデガーの弟子だったハンス・ヨナスの哲学研究家だな。ハイデガーの主著「存在と時間」のまとめから、「存在の意味とは何か」という問いを中心に、これまでの歴史的な哲学を、哲学史全体をひっくり返すような議論を展開した。その洞察と分析は、私たちに説得力に満ちた、目から鱗が落ちるような、新鮮な気付きを与えてくれる。ハイデガーとナチスの関わりは、日本における軍部のファシズムとの関連でも興味深い。2023/12/02