NHKテキスト 100分de名著 2021年8月
アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ A5判/ページ数 116p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784142231287
  • NDC分類 028
  • Cコード C9498

出版社内容情報

前線で敵を殺しながら、震え、恋をするソ連従軍女性たちの証言を「生きている文学」として昇華させた本作。ノンフィクション作家として初のノーベル文学賞を受賞し、戦争、差別、自由といった普遍的な問題を提起し続けるアレクシエーヴィチについて、ロシア文学研究者の沼野氏が解説する。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

rico

104
本作を読んだときには、ただただ女性たちの証言のすさまじさに圧倒されるだけでしたが、出版当時の政治的・社会的状況を知ると、この作品が世に出た意味を改めて考えます。強圧的な国家権力は、暴力による反抗と同程度に、あるいはそれ以上に、個人的な感情や想いが表に出てくるのを怖れるのかもしれません。それは深く魂に根をおろし、時に大きな物語(例えば祖国を守るために戦うこと)への忠誠を揺るがすものだから。アレクシェーヴィッチは独裁体制を強める故国を離れ、今も戦い続けているとのこと。「小さな物語」の力を信じたいです。2021/09/29

はるを@お試しアイコン実施中

81
🌟🌟🌟🌟🌟。先日読み終えた同作をロシア文学研究者の沼野恭子先生の解説で改めて振り返る。当時のロシアの女性達がいかに残酷、残虐な行為を受けたりさせられたりして心に一生癒えない傷を負わされたまま(それでも運良く)生き残り戦後を迎えれば今度は社会の中で男性だけてはなく同姓である女性達からも差別的な事を言われたりして肩身の狭い思いをして生きてきた。読んでいて俺自身が傷つくくらいなので当事者の傷は想像出来ない。2022年、ウクライナ侵攻を目の当たりにして段々と他人事では済まなくなってきているように感じる。2022/06/23

ころこ

43
毎年8月が戦争ものなのは、何ともTV的です。さて、著者が問いかけるのは、これは文学なのだろうか歴史なのだろうかということです。強調されているのは、アレクシェーヴィチが掬い上げた言葉は、オーラルヒストリーの様な名前のある人のしっかりした証言ではないということです。証言も度々変わったり、大事な部分が聞けるまで時間を掛けて粘ったり、得られた証言が論理的でなかったりします。しかし、そういった揺らぎの中に言葉にならない言葉があり、男性が語る「大文字の歴史」には無い、女性の語りの中に新しい表現を発見します。2021/08/01

コニコ@共楽

30
大きな歴史からこぼれ落ちた”小さな人間”を物語った証言文学『戦争は女の顔をしていない』は、その本自体が歴史をもち、しかも今も生き、成長している作品だということがわかった。この本は1985年に出版され、ペレストロイカを経て増補版が出ている。その声は世界に向けて成長をし、文学という形で、悲しみの声を純化して伝えている。印象的だったのが、アレクシエーヴィチは「苦悩をともなった自由か、それとも自由のない幸福か。そして大部分の人が後者の道を歩む」と言っている。この言葉と、今のロシアの言論の不自由が響き合ってしまう。2022/04/06

かふ

30
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチは、父はベラルーシ人、母はウクライナ人。そして、ロシア語で執筆する彼女は、2015年ノーベル文学賞を受賞。しかし彼女はベラルーシ政権から反体制作家として弾圧されています。彼女がノーベル文学賞に選ばれたのはその著作が「ポリフォニック」で「人間の声のコラージュ」だからというもの。大きな物語の国家の歴史観に対する個人の声の小さな物語の集積としての文学。今、文学の世界で注目されている「聞き書き」は日本でも『苦海浄土』石牟礼道子や『ブルースだってただの唄』藤本和子がいる。2021/08/31

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/18159897
  • ご注意事項