出版社内容情報
読書が有害とされ、本を所持しているのが見つかるとファイアマンに家ごと焼き払われてしまう全体主義的な近未来社会。人は仮想現実の世界に浸り、考えること、記憶することを放棄し刹那的に生きている。反知性主義が広がる「現実」を鋭く風刺した予言的作品から受け取るべきメッセージとは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
107
1953年に出版された本なのに、内容は現代社会に当てはまるということを感じさせてくれる。スピードが重視され、耳に巻貝をして、3面をテレビに囲まれ、視聴者参加型の番組に興じるのは、その頃から社会構造が変わっていないということを表す。戸田山氏がトリュフォーの1966年公開の映画の話と対比していて理解しやすい。本は著者(死者)が伝える過去から現在に向けてのメッセージだとしたら、今読んでる本たちも70年後には誰かの元に届くのか、もしくは燃やされているのでしょうか。それを決めるのはわれわれ大衆なのでしょう。2021/06/18
佐々陽太朗(K.Tsubota)
97
伊藤典夫訳の『華氏451度』(ハヤカワ文庫)を読んだ後、本書を読んでおさらい。なんと私の読み方の浅かったことか。私が本を読むのは楽しみのためであって、けっして勉強のためではない。しかしそれでもその本や作家のことを研究し、たくさんの知識を持った方の解説を読むのは好奇心が満たされるスリリングで愉しい時間であった。こうした読書も良いものだ。「NHK100分de名著」なかなか良い番組だ。永く続けて欲しい。そしてアーカイブとしていつまでも保存し、我々がアクセスできるようにしていただきたい。2021/07/15
れみ
85
NHK-Eテレ「100分de名著」のテキスト。「華氏451度」を読んでいて、あれ…これって今の世の中のことを言ってるんじゃ?と感じた部分を解説で言葉にしてくれているので、より理解が深まったな。それにしても、100分(25分×4回)で名著を紐解く(要約して紹介する)番組でこの作品を取り上げるって、なかなか興味深いな。ただ、手軽に紹介するのが悪いことばかりとはかぎらず、それをきっかけにその名著を手に取ったり、色んなことを考えるきっかけになるから良い面もあるよねと思う。2021/06/21
おたま
70
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』を読みながら、並行して読んでいった。ブラッドベリの文章は、非常に詩的だったり、隠喩や引用が多い。それらについても解きほぐして解説してくれている。また、見落としがちなところにも、よく心が配られていて、『華氏451度』の読みの深度を深めてくれる。『華氏451度』を読むときには、ぜひこちらも参考にしてほしい。2024/11/01
momogaga
62
『華氏451度』は文庫本、映画でストーリーを楽しみました。NHK 100分 de 名著 で紹介されるのを楽しみにしていました。 あらためて、舞台となった近未来の恐ろしさを理解しました。人々の思索と記憶を奪う社会の実態が、ますます現実の世界とシンクロしてきています。 忘れることが良い世界。そして、本が持つ思索する行為を抹殺していく世界。今の私に出来ることは、現実に流されること無く本を読みながら思索を続けることです。 2021/06/12