出版社内容情報
深く問う、とはこういうことだ。個から国家までを貫く思索の轍(わだち)をたどる
1968年、学生運動が最高潮に達し、「最後の政治の季節」に登場した一冊の書物が『共同幻想論』だ。全共闘世代に熱く支持され、貪り読まれた本書は、「信じるとはなにか」「国家の起源とは」「国家とはなにか」という問いに対して深く、本質的にとことんまで考え、向き合った吉本隆明の格闘の記録でもある。
「個人幻想」「対幻想」「共同幻想」という3つのキーワードも有名だが、一方で本書はきわめて難解な内容でも知られる。吉本の主著とされ、戦後、日本人が国家について考えた最高峰とされる『共同幻想論』、その現代的意義に寄りそいながら読み解く。同時代を生き、『共同幻想論』が発した爆発的威力を知っている世代だけではなく、それ以外の人たちにも戦後最大の知識人、吉本隆明に入門できる格好の解説書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
78
Eテレの番組では伊集院光がいい意味で目立ちわかりやすいが、文章で読むと先崎彰容氏の吉本隆明の文章に触れた時の衝撃がそのまま伝わってくる。そもそも吉本が戦後軍人だった帰還兵に強烈な違和感を覚えたことが共同幻想を発想するはじまりとあるが、彼自身が詩人であり、父親が船大工であるという労働者の立場からの文学が元にあると感じた。コロナで日々当たり前と思っていたことが意外と脆いバランスの上に成り立っていたことやネットやニュースで流されていることに共同幻想をもつ危うさに陥りがちな現代だからこそ、吉本のひとり立つ態度を⇒2020/07/29
yutaro sata
26
共同幻想論の本編だけでなく、序を徹底的に読み込み、この本の持つ意図を明確にしてくれている。さらに敗戦体験という文脈や信仰の問題という線を引いて、より本家『共同幻想論』を読みやすくしてくれている有用な入門書。 国家は元来、性的なものが発展していったものであるがゆえに、個人が国家に対して激したり、無視したりと、どうしても感情的に関わってしまうことを説明してくれているところなどが特に面白い。2023/10/20
ゆう
23
柄谷行人の本に吉本隆明に関する記述が出てくるのですが、原著にあたるには荷が重いなあと思っていたところ、丁度100分de名著にとりあげられていたのでこちらを。本書でも十分難しかったので、原著にあたっていたら撃沈していたことでしょう。共同幻想論とは、エンゲルスが提唱した国家の誕生(階級闘争を隠ぺいするものとしての)に対峙するものとして、吉本がおもに古事記から導き出した日本における国家誕生を説明するもの。昨年古事記を読んだためか、そこから吉本が様々な概念を取り出す思考方法について、スリリングに面白く読めた。→2020/07/19
猫丸
18
手軽な学習参考書のような明快な整理によって、問題の在処と思考の道筋を鮮やかに照らしてくれる良きナビゲート本だ。これから吉本入門しようなんて奇特な人におすすめです。やはり「共同幻想論」時点での対幻想は婚姻関係よりも兄弟姉妹関係の方に偏っているのが理解できた。吉本自身の対幻想の位置付けがいまいち輪郭が掴めないのは、我々の思うエロス的関係が近代以降の視点に固着しているからかもしれない。倫理の誕生がニーチェとかなり接近していることも再確認。しょうがない、もう一度原典を読まねばならんな。2020/08/06
軍縮地球市民shinshin
16
2020年7月に放送されたE-テレの「100分de名著」のテキスト。本放送は視聴していないが、テキストだけでも内容が分かるようになっている。先崎氏の著作はほぼ読んでいるので、氏が難解な吉本隆明『共同幻想論』をどう読み解いているのか気になったので買ってみた。しかし吉本のこの著はそれでも難解であることがわかった。ただ執筆動機が「戦前絶対だと思っていたことが戦後もろくも崩れさり、何が真で何が偽なのか分からなくなった」ことだと1章で書いてあった。吉本は敗戦時21歳。「純粋」な人だったのだろう。筑紫哲也もそうだが、2021/06/02
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