出版社内容情報
「今、ここ」を起点に生きよ
チェコスロヴァキアの民主化運動「ビロード革命」を導き、大統領となったハヴェル。劇作家である彼が弾圧に屈せず真実の生の意義を説いたこのエッセイは、今日でも多くの示唆に富む。全体主義に絡めとられない生き方とは? 多種多様な人々が連帯し立ちあがる時とは? 「今、ここ」で何をすべきか?──壁を突き破る言葉の力を信じ、無血革命を成し遂げたチェコが誇る哲人大統領ハヴェルのメッセージを、日本の現状に重ねて読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
90
バラク・オバマがプラハで演説しハヴェルに会ったのが2009年。彼の死の2年前であった。チェコの誇る哲人大統領の著作を東大准教授が解説する。ハヴェルは劇作家として1968年プラハの春を経験するも、その後共産党の支配する社会で禁書扱いとされ、そんな中1978年に本書は書かれた。1989年ビロード革命で大統領に選出され2003年に任期満了で退任した。「自分がいかに無意味で無力であっても、世界を変えることができるのだと理解する可能性を我々誰もが秘めている」というメッセージは、チェコが辿った道のりとリンクしている。2021/03/25
れみ
83
NHK-Eテレ「100分de名著」のテキスト。この本も著者も今回初めて知り、あまりなじみのないテーマだったし正直ちょっと難しいと思うところも多かったけど、この本以外のハヴェルの著作などもあわせて、この本が書かれるに至るまでのチェコスロバキアの歴史やロシアと東欧の国々の関係も色々知ることができたのは良かったし、「青果店の店主」が私が思うような個人商店主とかではなく国営企業のネットワークに所属する存在ということに驚きつつも、民主主義の国に生まれ育ってもこういうものに流される危険って絶対あるなと考えさせられた。2020/02/26
1959のコールマン
65
☆5。この本は「力なき者たちの力」の解説本では無い。ヴァーツラフ・ハヴェル、チェコ、そしてなによりも今現在の「ポスト全体主義」の時代を読む前の準備体操としては最適。なお、これ抜きでハヴェル関連の著書を真っ白のまま読んでしまうと消化不良を起こしてしまうこと必定。まずは体をよくならしてから水に入ろう。表紙には「真の『民主化』は『言葉』によって成る」とあるが、そんな単純なことは書いていない。注意。「言葉とは神秘的な、多義性をもつ、両面的価値のある、いつわり多き現象である」p106。反民主化も言葉によって成る。2020/03/22
Nobuko Hashimoto
38
Eテレの放送と併せて。ハヴェルの文章は抽象的で難しいので、解説つきで背景や意味を理解するのは有効だと感じた。放送では、伊集院光氏が我々の身に置き換えて具体的な事例を挙げているのが効いていた。番組プロデューサー氏や解説の阿部氏はチェコの民主化運動とハヴェルの活躍をリアルタイムで見て感銘を受けた世代。その思い入れが番組に反映されていて見ごたえがあった。ただ、私自身ハヴェルを尊敬しているが、今秋の民主化30年を祝うプラハの諸行事でもハヴェルは別格の扱いで、偶像化しすぎではないかという印象は持った。2020/02/28
フム
32
100分de名著で取り上げられなければ、ハヴェルの名を知らないままだった。恥ずかしい。ハヴェルが『力なき者たちの力』を執筆した1970年代のチェコスロバキアはプラハの春後の「正常化」体制の中で検閲や監視が横行し文化が破壊される時代だった。地下出版で刊行された本書は、全体主義体制にあって自分は「無力」であると感じていた人々に対して、自分には目に見えない「力」があるのだという一縷の希望を与えた。そして社会主義の東欧だけでなく、「アラブの春」ではアラビア語に翻訳され、街頭で抗議活動をする人たちの励みになったのだ2020/02/22
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