内容説明
二十世紀に「死んだ」と言われたマルクス思想が注目されている。資本がすべてに優越する状況が、十九世紀と似てきているからだ。しかし富の分配や「格差」の是正は、本質的な問題ではない。それよりも、富とは何か、それはどのように生み出されるのか、どのような形で蓄積されるのかを探究したのがマルクスだった。賃金労働は生物としての人間の本質を損なう性質を持つとして資本主義の問題点を鋭く見抜いたマルクスの視点を踏まえ、国際資本が国家から個人までも翻弄する現状を打破するための条件を提示する。仕事に追われるすべての給与生活者、必読!
目次
第1章 マルクスはいかに受容されてきたか―四つの断面
第2章 現代資本主義の危機
第3章 近代社会哲学の出発点
第4章 自由主義批判と疎外論
第5章 賃金労働の本質
第6章 実体論から関係論へ
第7章 現代社会理論の条件
著者等紹介
鈴木直[スズキタダシ]
1949年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業、同大学院比較文学比較文化博士課程退学、東京経済大学経済学部教授(社会思想史)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
funuu
14
人間的解放には物資的条件の充足が欠かせない。シュトレークによれば、70年代の危機は解決されたのではなく、貨幣の不思議な力を借りて先送りされたにすぎない。この「貨幣による時間稼ぎは次々と形を変えながら、今もなお続けられている。周知のように、現在は中央銀行が国家や銀行から債務を引き取る形で巨額の貨幣を市場に供給している。他方、ピケティによれば、成長率の低い経済では労働から得られる所得よりも保有資産が産み出す所得の方が大きくなる。ピケティはこのことを膨大なデータをもとに立証し、格差拡大への警鐘を鳴らした。二人の2016/04/18
はとむぎ
9
良い本!最近西洋の歴史や宗教改革、哲学に少し触れていた。けど、哲学は全く理解出来ない分野だった。この本には、カントやホッブズ、ルソーなどが万人は平等であると導き出した動機とロジック(哲学)が記載され、歴史や宗教がどんな風に関連してて、マルクスの思想がどんなものだったのかを書いている。そこから現在の資本主義(人間の本質)に内包された問題が何であるか、どんな風に国際システムを進化させるべきかまで論じてる。図書館で探していた本の近くにあった本ですが大当たり!マルクスガブリエルにも挑戦できそうです。(笑) 2022/02/16
浅香山三郎
9
NHKのラジオ講座を元にした本といふことだが、議論がいろいろなところに飛んで、読むと分かりにくい部分も。3、6、7章の挟まり方が余り上手くないやうに思つたが、だうだらうか。2018/02/06
Happy Like a Honeybee
9
今自分がかかわるのは、存在なのか認識なのか?労働力という特別商品は、労働を提供し価値を想像する独自の使用価値を持つ。教育は将来の商品価値を高める先行投資であり、教育機関は労働力商品の生産工場…。宇宙の片隅でほんの一瞬、数十年の生命を与えられている個体。人生の無意味さを絶望しても何も変わらない。どう解釈するか。2016/05/07
樋口佳之
8
階級闘争が存在するって、それはその通りだろう。ただし闘争を仕掛けているのは私の階級、金持ち階級の方だ。そして私たちは勝利を収めつつある / 分裂は資本主義と類的本質の間にあるのではなく、類的本質そのものの内にある。/この前後の文章がこの本の核心だろうと思います。ただその後の展開で解決されているとは私には読めませんでした。/2016/04/27