出版社内容情報
あなたの街は大丈夫か!?
明治神宮外苑の再開発について反対の声が相次ぎ、議論を呼んでいることは多くの人の知るところとなった。
3棟の高層ビルが建てられる計画など、その開発スキームは高層化によって「保留床」を生み出し、得られた収益などで神宮球場を含む一帯の再開発にかかる事業費を補填するというものだ。
ほかにも福岡、秋葉原、中野、福井など、今まさに変わろうとしている都市を現地で徹底取材することで、再開発の裏側に迫ってゆく。
高層化ありきのスキームとなっていないか、街の個性や住民目線を置き去りにしてはいないか、そして、次世代に引き渡せるものとなっているのか――多面的な側面から検証する。
内容説明
福岡、秋葉原、中野、福井など、現地の徹底取材から浮かび上がる再開発の光と影。その再開発は、高層化ありきのスキームとなっていないか、資材や人件費の高騰による財政リスクにどう対処しているか、街の個性や住民目線を置き去りにしてはいないか、そして、次世代に引き渡せるものとなっているか―多面的に検証する。
目次
序章 なぜ全国の都市で高層ビルによる再開発事業が進むのか
第1章 未曽有の再開発ラッシュから見える日本の“今”
第2章 全国各地で顕在化する“課題”
第3章 再開発をしたけれど…
第4章 ユニークなまちづくり 地域の取り組みとは
終章 まちづくりのあるべき姿とは(特別寄稿)野澤千絵(明治大学政治経済学部教授)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
うえぽん
48
2024年1月のNHKスペシャル制作チームによる新書。秋葉原、立石、福井、中野など、タワマン等の高層化中心の再開発事業を検証。人口急増に追い付かない学校や医療等のインフラ、床余りによる空室率の高止まり、資材高騰による地権者の負担増や計画縮小など影の部分にも注目。他方で、住民参加や利用者目線で結果的に満足度の高い再開発を行った下北沢、紫波町や、面的なまちづくりとタワマン規制を行う神戸市には好意的な眼差しを送る。野澤教授による「ゴール」設定、過密化影響評価、減築利用等の指摘は、都市部・地方部両方に重要な視点。2024/09/29
ポロン
41
少子化が進むとは言え、市町村によっては0歳から14歳までの転入が超過し、インフラ整備が追いついていないところなど、地域の学校現場が混乱を起こしている現状。世に言うタワーマンションの建設が続くことで、市民生活に多大に影響を及ぼす事例。特に救急医療の逼迫は他人事では無いはずだ。これから直面する数多の諸問題について、私たち一人一人が意識付けを行っていかなければならない。ただどなたかもレビューされていた通り、世情に関しては日進月歩で様変わりする。日ごろから、身の回りの情報を知ることの大切さを改めて思い知らされた。2024/10/03
おせきはん
32
人口減少、建設コストの増大などを受けて、高層化して収益の最大化を図る都市再開発事業のビジネスモデルの見直しが迫られている状況を理解できました。読み終えたところで、中野サンプラザ跡地再開発事業の計画見直しの報道がありました。紹介されていたいくつかの事例のように、事業の収益性を検討する際に、住民や地域の課題に寄り添う視点も、一層、重要になってくると思いました。2024/10/12
よっち
28
人口減少時代における各地の再開発がどうなっているのか。今まさに変わろうとしている都市を現地で徹底取材することで、再開発の裏側に迫る1冊。明治神宮外苑の再開発における、高層化で得られた収益などで一帯の再開発にかかる事業費を補填する開発スキームにおける議論。再開発で変わろうとしている福岡、秋葉原、中野、福井、神戸といった各都市の現状、人口増加が続くさいたま市の課題、岩手県紫波町の補助金に依存しない再開発など、建設費や人件費高騰に伴う計画の見直しは避けられない中で、地域らしさを活かせる発想の重要性を感じました。2024/08/18
kei-zu
27
都心を訪れるたびに景色が大きく変わっている。山手線のターミナル駅だけでなく、私鉄沿線の変化も著しい。一方で、本書にも記述があるとおり、「ひと昔前」の開発である湾岸地帯の人気は下がり気味のようだ。ゼロサムについて、博多の活気の一方で九州の他の都市の人口減少を本書は指摘する。地方都市における困難の打開に向けた試みをもう少し読みたかった。2024/08/12