出版社内容情報
「驕れる道長」は虚像?
歴史の主役としては光の当たらない平安貴族。
だが、武士が台頭し不安定化する世情にあって、彼らは国のために周到に立ち回り、腐心しながら朝廷を支えていた。
NHK大河ドラマ「光る君へ」の時代考証も務める著者が、知られざる平安貴族の実像を、
藤原道長『御堂関白記』、藤原行成『権記』、藤原実資『小右記』という三つの古記録から複合的に明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
137
平安貴族とは朝廷内での出世競争と贅沢な生活に明け暮れたイメージが強い。しかし彼らの残した日記には、優雅さとは程遠い生臭い権力闘争の実像と複雑な人間関係模様が記されていた。政治を停滞させぬため天皇のワガママを押さえつける道長、信仰を素材にファンタジー小説を書いた行成、血統故に出世したライバルへの恨みから同時代録を作成しようとした実資らの言動は、現代にもいそうなキャラだ。道長の「この世をば」の歌も実資の日記のおかげで伝わるなど日本人の心性の根源を考える上で、世界でも稀な古記録は今日もその価値を失わないだろう。2023/11/25
六点
95
同著者の『壬申の乱』からいきなり300年ばかり時空を超えた一冊を読んだということになる。古代史の守備範囲の広さに驚く他無い。しかも歴史考証を担当されているとの事である。視聴しとらんので知らんけど。古記録を中心に見た藤原道長の人間像である。古記録一般について説明から始まり、『御堂関白記』『権記 』『中右記』と言う古記録の有名所から描き出される道長の姿に、出来る男はこき使われて大変であることだなあと感じいった事であることだよ。2024/04/12
Sato19601027
79
藤原道長(大河では柄本佑)、行成(渡辺大知)、実資(秋山竜次)に「貴重な記録を残してくれてありがとう」と言いたい。2018年NHKラジオ第2「日記が明かす平安貴族の実像」の放送を文字起こしして、平安時代の「御堂関白記」「権記」「小右記」の古記録を倉本先生が読み解き、歴史の一場面を平安時代に詳しくない我々にも、優しく教授してくれている。平安貴族にとって、先祖から代々伝わって来たものを後世に伝えながら、儀式を記録し、権力の中での生き様を残すための日記は、千年前の出来事を今に伝える貴重な一次資料となっている。2024/05/23
きみたけ
78
大河ドラマ「光る君へ」をより深く味わおうと思い借りてみました。著者は国際日本文化研究センター教授の倉本一宏氏。今回の大河ドラマの時代考証にも携わっているそうです。「御堂関白記」「権記」「小右記」を解読することによって、平安時代のリアルな姿を分かりやすく伝えようとした解説書。昔の人は書物を大切にしていたそうで、火事になった時に文車を引っ張って逃げれるようにして、自筆本や古写本を大事に守ってきたとのことです。エライですね~。藤原道長のイメージが少し変わりました。大河ドラマの今後の展開も楽しみです。2024/04/28
若黎
36
三者三様の日記。倉本先生の現代語訳は『御堂関白記』『権記』『小右記』持ってるけど、まだどれも中途半端状態。なんせ記録なので、現代語訳といえど、そう面白いものじゃないから、なかなか進まない。そういうとき、こういう本がでると、読んでみようかなー、という気分になってくる。2024/01/02