内容説明
二〇一九年四月三十日、「平成」の三十年間が終わりを告げる。「私たちは今どんな時代に生きていて、これからどんな時代を生き抜こうとしているのか」。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の教授四人が、「宗教と社会」をキーワードに、激動の平成時代を総括する。
目次
第1章 世界のなかの平成日本(「平成」とは何であったか;昭和から平成へ ほか)
第2章 スピリチュアルからスピリチュアリティへ(日本人の宗教性を成す三つの層;オウム誕生とニューエイジの一般化 ほか)
第3章 仏教は日本を救えるか(平成に起こった二つの「敗戦」;「心の時代」が始まった ほか)
第4章 平成ネオ・ナショナリズムを超えて(宗教とナショナリズムの時代;新自由主義とネット右翼の台頭 ほか)
著者等紹介
池上彰[イケガミアキラ]
1950年生まれ。ジャーナリスト。東京工業大学特命教授
上田紀行[ウエダノリユキ]
1957年生まれ。東京工業大学教授・リベラルアーツ研究教育院院長
中島岳志[ナカジマタケシ]
1975年生まれ。東京工業大学教授。専門は南アジア地域研究、日本近代政治思想
弓山達也[ユミヤマタツヤ]
1963年生まれ。東京工業大学教授。現代社会の宗教性・霊性をテーマに研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やすらぎ
129
「人間の心には仏様のような面もあれば、非常に邪悪で暴力的な面もある…」平成は精神混乱の時代でした。…あなたの人生は多分、学校に通って就職して、結婚して何回か転々として、それなりで退職して、余生を過ごして終わる。…無力感を抱きながら延々と繰り返し、少しずつ生きている実感を失っていく。…この道を進むのは正しいのか。自分は価値ある者なのか。目の前では常に人か行き交っている。その数だけ悩みがある。自分に何を求めるか。生きづらかった平成に何を思う。さらに混乱する令和を生きる。先の見えない道、足元の今を進むしかない。2020/11/18
hatayan
46
池上彰、上田紀行、中島岳志、弓山達也の東工大教員4名が宗教を切り口に平成を総括。オウム事件と阪神大震災の起きた1995年に日本は宗教的な問いに直面。オウムを代替する物語としてネット右翼、新自由主義がスピリチュアリズムとナショナリズムを融合する形で台頭。一方「心のケア」「生きる意味の探求」といった精神世界への関心の高まりは医療、福祉、教育、平和などの分野で確認できるように。平成の30年で日本がバブル崩壊、格差拡大という2度の敗戦を経験したとされるなかで、宗教的なるものの再活性化の機運が高まっているとします。2020/07/23
おさむ
38
宗教の視点から平成を語る面白い取り組み。リベラルアーツで最も元気がある東工大教授陣が論者。特に中島岳志さんの第4章が秀逸。平成は政治改革が大テーマだった。田中角栄に代表される利益誘導政治はある意味、大きな政府の再配分だった。その不公平さを透明化すれば良いだけだったのに、小さな政府の新自由主義社会に雪崩を打った。現実の反対語はかつては理想だったが、それが虚構となり、さらには不可能性になった。全てが自己責任の時代となり、失敗した人間は使い捨て。だから生きづらさばかりが広がった。それが平成という時代だ。2019/02/15
molysk
29
平成における社会と宗教の動きを、世界の動きの中の日本、宗教教団の活動と個人のスピリチュアリティへの関心、伝統仏教の中の新たな動き、ナショナリズムと宗教、という異なる視点から4人の筆者が振り返る。バブル崩壊、オウム真理教、アメリカ同時多発テロ、東日本大震災。激動の平成に人々が抱える「生きづらさ」のなか、求められるものは何か。それは生きる意味の探求かもしれないし、人生における複数の道の確保かもしれないし、自分が価値ある者と意味づけられる場所かもしれない。各自の答えに、宗教が果たせる一定の役割は存在するだろう。2019/11/17
ちくわん
27
2018年9月の本。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の4氏が、日本の宗教という目線で「平成」を振り返る。私の人生は、昭和23年+平成30年+令和2年。「生きづらさ」を、ど真ん中に感じつつ生きてきたんだな。なかなかズバッと書かれています。2021/06/01